『 SLOW LOVE 』
笹本 千早(ささもと ちはや)26歳
× 相沢 圭(あいざわ けい)24歳
ぐでんぐでんに酔っぱらった翌朝、隣に見知らぬ人が寝ている。
なんて話はよく聞くし、逆によく見知った人がいた、なんてのも有りがちだ。
でも、俺の場合は…
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「は? なんで? なんで急に別れるなんて?」
金曜の夜。
待ち合わせのカラクリ時計の下で、無表情のまま俺を見下ろす男のコートを 俺はギュッと握りしめた。
その手をやんわり掴まれ、コートから外しながら男の顔が僅かに引き攣る。
「なぁ、俺 分んねぇよ。 ちゃんと理由を聞かせろよ」
ここしばらく仕事が忙しいという理由で会ってくれなかった恋人からの突然の呼び出しに、残業そっちのけで飛んで来た俺に向かって開口一番言い放たれた言葉が別れてくれ≠セった。
納得がいかない俺が男に詰め寄ると、そいつは一歩後ずさりながら言った。
「理由、自分で思い当たるコトねぇわけ?」
ギクリっ!と、震えた指先を見て、男が微かに笑ったような気がした。
「自分でも判ってるんだろ? お前……重いんだよ」