Novel Library 2

□『 すくーる でいず 〜 シナモンとネクタイ〜 』 30
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 拓はノロノロと顔を上げて功を見ると、ぼんやりとしたまま唐突に話しだした。

「俺とのコトが香月の父親に知られて、今日、学校に来たんだ。 責任とれって…別れないなら香月を転校させるって。 香月、今の学校 好きなのに。 他の学校になんて移ったら香月はまたダメになるのに…だから、俺がいなくなればって思ったんだ。 なのに…香月が、別れたくないって…。 二人でどこか行こうって…そんなコト、香月にさせられる訳ない…」

 訥々と話す拓の言葉は意味を成さない独り言のようで、多分 功には上手く伝わらなかっただろう。
 それでも功は、拓の話を静かに聞いていてくれた。

「香月を守りたかったから、別れようとしたのに…なのに…逆にたくさん香月を傷つけて……でも、他に方法が無かったから…あんな風に言うしかなかったんだ。 だから――」

「拓、落ち着けよ」

 何の感情も入っていないような淡々とした口調は、激しい動揺の裏返しだった。
 功はそのコトに気づいたのか、拓の頭を優しく撫でながら言った。

「生徒とのコトが発覚して、学校をクビになったのか?」

 功の手の下で拓は力無く首を振った。

「俺が学校辞めて香月と別れれば、香月は転校しないで済むから」

 拓の一言で、おおよそのコトを理解したらしい功がため息をつきながらポツリと言った。

「そういうコトか」

 功は立ち上がると、キッチンへ向かう。
 拓はそれを見るともなしに目の端に感じながら、ソファに身を沈めた。
 ふと、キッチンから声がした。

「お前たちのコトを手放しで賛成したわけじゃない俺が言うのも変だが、その、香月って子はお前を選ぼうとしたんだろ? どうして受け入れなかったんだ?」

「できるわけないよ、そんなコト」

 拓は僅かに笑った。

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