Novel Library 2

□『 すくーる でいず 〜 シナモンとネクタイ〜 』 28
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 翌日、拓は駅まで送ってくれた功と一緒に 駅構内のベーグルショップでブランチを取った後、新幹線に乗った。
 もう少し ゆっくりしていけばいいのに、と言う功の言葉に僅かにグラつきはしたものの、香月に早く会いたいという思いには勝てなかった。
 近いうちに、また顔を出すよ≠ニ手を振りながら、いつか功には香月と会ってもらおうと思った。
 座席に腰を下ろして腕時計を見ると、11時を回ったところだった。
 テストは今日が最終日で、生徒は昼前には下校する。
 自宅に帰って帰省の荷物を片付けたとしても、2時くらいには香月と会うコトができそうだ。
 とりあえず下校後にメールを送っておけばいいだろうと、膝の上のコートのポケットから文庫本を取り出す。
 帰省する時は心配ごとの方が多くて、移動時間を気にする余裕もなかったけれど、すべてが済んでしまった帰りの新幹線は きっと時間を持て余すだろうと、キオスクで買って来たものだった。
 学生の頃 好きだった作家のもので、就職して以降 忙しさのあまり新刊が出たコトも知らなかった。 1年以上も前に刊行されていた その本を開いて、数ページ読み進めるうちに拓は小説の世界に没頭して行った。

 ふと、車内アナウンスが耳に届いた。
 ぼんやりと その声を聞いていると、自分が降りる駅名を告げるアナウンスだった。
 いつの間にか本を手に眠っていたらしく、拓は慌てて荷物をまとめると下車の準備を始めた。

(自分で思ってたより 疲れてたみたいだな…)

 生あくびを噛み殺しながら新幹線から降り、ホームの隅で香月に連絡を取ろうとケータイを取り出した時だった。
 フリップを開くより先に、着信音が鳴り出した。
 あまりのタイミングの良さに、驚くより先に通話ボタンを押してしまっていた。

「もしもし」

『もしもし? 西岡先生? 安川ですけど――』

 受話口から聞こえてきたのは 安川の声で、その後ろから ちょうどチャイムが聞こえたため、それが学校からだと判った。

『お休みなのに、すみません。 まだ、ご実家かな?』

「いえ、今 こっちに戻ったトコです。 と言っても まだ駅なんですけど…」

 拓が答えると、安川はしばらく黙っていたけれど、言いにくそうに切り出した。

『それじゃあ、申し訳ないんだけど 今から学校に来てもらえないかな?』

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