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□『 すくーる でいず 〜 シナモンとネクタイ〜 』 27
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 未成年の香月の気持ちを受け入れた時から、覚悟はできている。
 香月は悪くない。
 悪いのは、香月のために 香月を拒むことも、手離すコトもできない自分なんだと、ずっとそう思っている。 それは嘘ではなかった。

「拓…」

 功の静かな声が部屋に響く。

「正直、俺はお前たちの恋愛の何が正しくて、何が間違っているのかなんて通り一遍的なコトしか分らない。 お前たちの気持ちまで計れないからな。 でも、ハッキリ言うが、そんな関係が長く続くとは思えないし、幸せな結末に結び付くとは考えられない。 仮にお前たちが望むような将来を迎えられるとしたら、そのために必要な犠牲や努力は並大抵じゃないぞ?」

「なぁ、兄ちゃん。 幸せな結末ってなんだろう? 結婚して家庭を持つことなのかな? だとしたら、俺は永久にそれを手に入れることはできないから……俺達の関係は確かに将来的なものは何も見えないよ。 でもね、だからこそ 今を大事にしたいと思ってる」

「ずいぶん刹那的なんだな…」

 功の言葉に胸が痛む。

「そうだね…でも……それでも、あいつが好きなんだ。 自分でもバカみたいだと思うけど、いつか あいつの気持ちが離れたとしても、それまでは傍に居たい。 離れたくないんだ」

「…例え お前が教師を辞めたとしても、時間が過ぎて相手の子が成人しても、お前たちが教師と教え子だった事実は一生変わらないんだぞ?」

「判ってる」

 それは香月と拓が同性である事実と同じで、一生変わるコトがないと 判っている。
 功に無理にでも理解してもらおうとは考えていない。
 でも、大好きな兄だからこそ、知っておいてもらうコトができて良かったと拓は思った。
 誰にも言えなかった香月への想いを、例え 否定されたとしても最初に聞いてくれたのが功だったコトに拓は感謝した。 それが、聞いてくれた功に対してなのか、居るともしれない神様に対してだったのかは どうでもいい。

「拓、一つだけ聞いても良いか?」

 しばらく押し黙っていた功が、突然 拓の目を真正面から見捉えて言った。
 拓がそれに頷くと、功は真剣な表情で言葉を続けた。

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