Novel Library 2

□『 すくーる でいず 〜 シナモンとネクタイ〜 』 22
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「今日、何時に帰れそう?」

「5時から職員会議あるし、学校出るのが7時か8時だな」

「ふぅん」

 納得したのか、してないのか、良く解らない返事をしながら机の上の 拓の携帯ストラップを指先で弄る香月を見上げる。

「お前は? もう帰るのか?」

「5時まで ここにいる」

 拗ねたような口調に、苦笑する。
 多分 香月は一緒に帰ろうと誘いに来たのだと思う。
 もちろん一緒に帰るといっても別々に学校を出て、駅で偶然を装って待ち合わせするのだけれど。

「居たら邪魔?」

「そんなわけないだろ」

 だよね≠ニ笑いながら、机の上で拓のストラップに自分の携帯ストラップを並べている。
 二人の携帯ストラップは、色違いのペアだった。 香月が拓の誕生日にプレゼントしてくれた物だ。
 初めはペアの指輪だかなんだか貴金属を買うと言い張った香月に親に養ってもらってる奴から高価な物なんかもらえない≠ニ突っぱねて、ひどく落ち込ませてしまった。
 言ったコトも事実だったけれど、本心を言えばプレゼントなんて どうでも良かった。
 香月が傍にいてくれるだけで十分だと思っていたからなのだけれど、それを伝える前に香月は行動していた。
 シュウさんの所で一日だけアルバイトをして、そのバイト代でペアの携帯ストラップを買って来たのだった。
 革製のバータイプのもので名前やメッセージが刻印できる物だったけれど、そこには何も刻まれていない。
 香月の話では、名前なんて入ってたらダサいし、と思っていたら店の人からI Love You≠薦められたそうだ。
恥かし過ぎて断ったらしいが…。

(今時、女子だって そんなメッセージ入りのストラップをもらったら引くだろう…)

 店員のはた迷惑な助言を香月が断ってくれたコトは、拓にとっても有り難かった。 さすがにI Love You≠ヘキツい。
 名前の方が数段マシかもしれないと思ったが口にはしなかった。

「香月、コーヒー飲むか?」

「飲む。 でも、仕事はいいの?」

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