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玄関のドアを開けると、二人は鍵を閉めるのももどかしいとばかりに、靴を脱ぎ、抱き合い、キスを重ねながら部屋を歩いた。
あの後、店を出て通りで拾ったタクシーで拓のマンションに向かう間も、ほんの少し離れるコトすら恐れるように 二人は手を握り合い 指を絡めたまま離さなかった。
ジャケットを脱ぎ、シャツを脱がされ、進んだ道に軌跡を残すかのように 着ていた物を点々と落としながら寝室に進む。
唇を合わせ、舌を絡ませ抱き合いながら進んで来るより まっすぐ寝室に向かった方が早いコトはお互い判っていたけれど、それでも二人は瞬時でも離れたくなく、互いの存在を確かめ合わずにはいられなかった。
そうして、ようやくベッドに辿り着いた二人は上半身裸でもつれ合いながら、そこへ倒れ込んだ。
ベッドのスプリングが軋む音を聞きながら拓が強く唇を合わせると、香月は拓の頭を両手でしっかりと包み込むように持ち、更に強く唇を押し付け舌を絡めてくる。
濡れた音を立てながら互いの舌を舐め合い、吸い上げ、それが激しく絡み合う度に抑えようのない欲望と熱が全身を熱くする。
その存在をもっと感じたいと、拓が香月の背に腕を回しきつく抱きしめて体を密着させると、足が絡み合い互いの欲を孕んだ膨らみが擦れ合う。
その途端、香月の動きが止まった。
「?」
少し困惑したように口づけを解いた香月に、拓は急に不安になった。
どんなに気持ちがあっても香月は元々ストレートなのだから、あからさまに男の体をした自分に触れて 迷い始めたのではないかと思ったのだ。
香月の背から腕を離し拓は体を起こすと香月を呼んだ。
香月は困惑の色をその表情に浮かべたまま、同じように体を起こす。
「香月…無理しなくても いいよ? 別にこんなコトはしなくたって――」
拓の言葉に香月は弾かれたように身を乗り出すと、思い切り首を左右に振った。
「拓ちゃん、違うっ……そうじゃなくて…」
そこで言葉を切ると香月は本当に困ったような顔で、拓の両腕を掴んだ。
「じゃあ、なに?」
掴まれた両腕をそのままに、拓も香月の腕を掴む。
すると香月は拓の顔色を窺うような眼差しで、掴み掴まれた腕を軽く前後に引き戻した。
「?」