「俺も今 一人なんだよね。 暇なら俺と遊ばない?」
男は、拓がゲイだと気づいているらしく、ニコニコと笑いながら握った拓の手の甲を親指で愛撫するように撫でてくる。
こういったコトは ちょくちょくある。
何故だか判らないけれど、初対面の相手がゲイだと判る時が拓にもあった。
そういった人種が集まる場所でもないのに、お互いあぁ、そうだろうな≠ニいう思いで目を見交わせたりする。
(同病 相哀れむってヤツなのかな? ちょっと違うか…)
どちらにしろ、行きずりの男と どうこうできるほど大胆な性格を持ち合わせていない拓には、丁重にお断りする以外に答えは無い。
しかも、今は香月と一緒なのだから。
「いや、俺は――」
香月に見られる前に、この男には早々に立ち去ってもらわないと≠ニ思い、断りの言葉を口にしながら 男の手から自分の手をスルリと抜いた時、何の前触れも無く 突然後ろから覆いかぶさるように抱きしめられた。
「!?」
振り返る間もなく、耳元に香月の吐息を感じながら その声を聞いた。
「ごめんね。この子 今、俺とデート中なんだ」
(この子、ってなんだ、この子って!)
年齢を訂正できていないコトや、男に手を握られていたのを香月に見られたかもしれないという焦りや、何より香月にしっかりと抱きしめられているコトで正直パニックを起こしかけていた拓は、心の中で どうでもいいコトをツッコんでいた。
「そっか、残念。 じゃあ、また機会があったらね」
男は最後までにこやかに手を振り、去って行った。
「もう、拓ちゃん ダメじゃん。 俺とのデート中にナンパされてたらさぁ」
「おま…何、言って…」