「うわっ、何? 孝輔のその態度っ」
「まぁまぁ」
苦笑しながら木下を取り成した岡田が、ふと気づいたように時刻表からはみ出して挟まれていたチラシを引っ張り出した。
それに気づいた孝輔が、止めようと手を伸ばしたものの一歩及ばず、岡田はチラシを開いてしまった。
「え? もしかして、ここに泊まりに行くの?」
それは、たった今 孝輔が予約したホテルのチラシで、旅行会社からもらって来たものだった。
「……」
瞬時に固まる孝輔を見て 俺は掛けるべき言葉が見つからず、引きつった笑いを岡田に向けた。
「あ、れ…? 俺、なんか不味かった?」
開いたチラシを両手でもった岡田は、困ったように孝輔と俺に順に視線を送って来る。
「……いや…」
少しして フリーズ状態が解除された孝輔は、岡田の手からチラシを静かに取り返し、畳んだ後、元のように時刻表に挟み込んだ。
微妙な空気が流れる中、岡田が少し慌てたように孝輔に向かって謝るものだから、孝輔もハッとしたようにその場を繕おうとする。
「なんか、悪いコトしたみたいで…ごめん」
「いや、別に岡田がどうこうってコトじゃなく、ちょっと、あまりの早業に驚いただけだから…」
「颯生、孝輔達は旅行に行くコト、お前に隠しておきたかったみたいだぞ。 なのに、お前が勝手にチラシ見るから困ってるじゃん」
突然、颯生の後ろにいた木下が面白そうに口を挿んだのを見て、次の瞬間 孝輔がマジ切れした。
「アホか! 隠したかったのは、岡田にじゃなくて、木下、お前にだ!」
「へ? 俺? なんで?」