Novel Library 2

□迷走 Holly Night 第1話
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T.

「よし、予約取れた。 2か月切ってるからヤバいかもと思ったけど、クリスマス・イブ行けんぞ」

「へぇ、割と人気のトコだから無理かと思ったけど…」

 ケータイのフリップを閉じながら、孝輔は俺に向かって笑いかけてきた。

「あぁ、残り2戸だったからな。もう1戸のコテージも埋まるのは時間の問題なんじゃないかって言ってたから、ギリってとこだな」

 俺、冴木奏多と同級生の狭川孝輔は、付き合い出して3か月足らずの恋人同士だったりする。
 男同士で恋人って、マジ恥かしいんだけど事実だから仕方ないよな。
 今年の夏、仲間4人で行った1泊旅行の時は まだ気持ちがすれ違ったままだった俺達は、旅行そのものは楽しかったものの、いろいろあり過ぎて手放しで満喫することができずに不完全燃焼気味だったコトと、二人で過ごす初めてのクリスマスだからというコトで、二人っきりの1泊旅行を計画しているところだ。
 行き先は信州。
 ホテル敷地内にある 個建のコテージで、暖炉に温泉付きという高校生の俺達にはかなり贅沢な宿泊施設だったけれど、俺達には別の目的があって そこを選んでいた。
 そのホテルの敷地内にある併設のスキー場で、毎年このシーズンに催されているXmasイベント。
 それが俺達の本当の目的だった。

「一緒に見られるな、クリスマスツリー」

 笑いかけてくる孝輔に、俺も笑顔を返した。
 そう、俺達の目的はクリスマスシーズン中だけ点灯される天然のモミの木を使ったクリスマスツリーを見るコトだった。
 実は、そのツリーが点灯している時に、恋人同士でそれを一緒に見ると永遠に結ばれるという乙女チックなジンクスがあるらしい。
 正直、そんなのはスキー場のでっち上げで、観光PRの一環だと俺は思うんだけど、強面のくせに時々 甘々の乙女脳になってしまう孝輔が、どうしても一緒に見たいって言うから、付き合うコトにした。
 もちろん、二人っきりの旅行や、クリスマスを楽しみにしているのは俺も同じなんだけど。

「あれ、二人で何の相談?」

「何だよ、なんか おもしろいコトでもあんの?」

 電車のダイヤを確認しながらあれこれ相談している所に、普段から仲良くしている岡田と木下がやって来た。

「別に…」

 話しかけて来た2人の方を見やった孝輔は、木下に向かって そっけなく言った。

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