Novel Library 4

□Symmetry vol.6
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 南雲先輩のクラスメイトの人に深々とおじぎをすると、後ろ髪引かれる思いで俺はその場からノロノロと立ち去った。
 何でだろう。
 俺、ものすごくガッカリしてる。

「あ、手紙…」

 スクバの中に忘れ去られた手紙のコトを思い出した。
 でも、さすがに手紙までは預けられない。俺は無意識に手紙の入ったスクバを、ギュッと抱きしめていた。
 ホントはガッカリしてる理由なんて自分でも分かってる。
 だって、俺、ここに来たら先輩と会えると思い込んでた。
 なのに……
 先輩に会えなかった。それだけのコトなのに、俺は本当に、心の底からガッカリしてる。
 どうして…?
 トボトボと階段を降り切った時、そこが昇降口横の階段だったと気がついた。
 フラリと足が昇降口に向う。
 いつの間にか俺は、1−Cの下駄箱に貼られたナグモと読める名前を一生懸命探していた。
 
「…あった!」

 下駄箱の真ん中辺り、南雲 太陽≠ニネームがついてる。
 ここが先輩の下駄箱。
 南雲、ってこういう漢字なんだ。
 それにしても太陽≠チてスゴい名前だな。読みはそのままたいよう≠ネのかな?それとも、もっと別の読み方だったりするのかな?

「南の雲と太陽だって。なんか、先輩にピッタリな名前だ」

 太陽みたいに優しくて、爽やかに明るく笑う人だったもんな。
 クスッと漏れた笑いと一緒に口元が綻んでしまった。
 どうして俺はこんなにも先輩が気になるんだろう。たった一回会っただけの、今まで知らない人だったのに。
 そうして俺は奇妙な胸の高鳴りと、何故だか淋しくなるような切なさを感じながら、動く事もできずに長いコト高等部の下駄箱の前に立ち続けていた。

 ――この時の自分の気持ちが何だったのか。俺がそれに気がつくまでに、そう時間はかからなかった――


  SymmetryE END      Symmetry vol.7
 
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