言葉でいくら言っても伝わらないのではないかと心配になる。
どうしたら届くだろう。
祥悟が、自分を強く欲してくれたコトがこんなにも嬉しいのだと。
それでも他に術はなく、結有は言葉を続けた。
「俺は祥悟さんが好きだよ。 でもそれは祥悟さんの策略に引っかかったからなんかじゃないからな。 祥悟さんが俺にしてくれたコト、言ってくれたコト、その全部が俺を幸せにしてくれたからなんだ。 こんな話聞かされたって、俺の気持ちは全然変わらないよ。 むしろ余裕のない祥悟さんなんてレアなもの見せられて、祥悟さんのコト、もっと好きになったかもしれない」
「結有!」
戸惑い彷徨っていた祥悟の腕が迷いを吹っ切るように結有の体を抱きしめた。
抱きしめられるままに逆らわず、結有は祥悟の胸に体を預けてその肩に顎を乗せる。
「俺は…結有のコトが好き過ぎて、いつだって余裕なんてなかったよ」
「祥悟さん…」
「もちろん、今もだ」
耳に届く祥悟の声に顔を上げ、不安げな表情を浮かべるその頬を両手で包み込んでゆっくりと唇を合わせる。
そうして軽く触れるだけのキスを繰り返し祥悟に与える。
祥悟が後悔するコトなんて何もないのだと伝えたかった。
僅かに触れたままの唇で、結有は祥悟に問いかける。
「俺のコト…好き?」
愛の告白のような甘い問いかけが吐息となり、祥悟の唇の上で溶けていく。
それを追いかけるように祥悟の唇が結有の柔らかい下唇を食むように触れ、指先が壊れやすい宝物を扱うような仕草で頬に落ちる髪を払った。
「好きだよ。 俺の腕の中に閉じ込めて、どこにも行かせたくないくらい…」
告げられた言葉も、零れる吐息もひとつ残らず受け止めたくて、結有は再び祥悟の唇に触れる。
「今の言葉で、許してやる」
再び尊大に言ってみせると、唇の上で祥悟が笑った。
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