Novel Library 4

□『 Symmetry 』 vol. 4
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「覚悟、できた。 俺、先輩になら抱かれてもいい」

 もうルキの言うコトは聞かない。 そんな思いも込めて、ルキを見つめる。
 こういうのを形振り構わないって言うんだろうか?
 でも、何かに構ってる余裕なんてない。
 先輩をルキに渡したくなくて必死だった。

「それ、本気なんだな?」

 俺の意志を確かめようとするルキの声は、それまで剥き出しだった感情が打って変わって押さえられていた。
 冷静さを取り戻したルキの声が、俺の胸に刺さる。
 だから、目を逸らさないでしっかりと頷いた。
 自分の気持ちを絶対に譲りたくなくて、キツく俺を睨むルキに挑むような目で応戦する。
 次の瞬間、フッとルキの視線が俺から外れて床に落ちた。

「……分かった…もう勝手にしろよ」

 踵を返すルキの横顔に、一瞬だけ何かを堪えるみたいな辛そうな表情が見えたような気がする。
 いや、見間違いだろう。
 ルキは今まで一度だってそんな顔を見せたコトがないんだから。
 そのままルキは俺に背を向けて部室から出て行った。

「…っ」

 一気に緊張が解けて、俺はその場にへたり込む。
 初めてと言ってもいいルキとの本気のケンカは、思った以上に俺を消耗させたみたいだ。
 気を落ち着かせようと深呼吸した途端、ルキのせいで酷い恰好になっている自分に気づいた。
 脱がされかかった制服を直しながら、じわじわと腹の底から沸き起こってくる焦燥感にも似た苛立ちを抑えるコトができない。
 八つ当たり気味に、手近にあった誰の物とも分からないスパイクを思い切り壁に投げつける。

「くそっ!」

 いつもルキには勝てなかった。
 成績も運動も、何をやっても弟のルキの方が上だった。 でも、俺はそんなコトどうでも良かったんだ。
 だって、ルキは俺の憧れで、大好きな弟で、大切なもう一人の自分だから。
 だけど、南雲先輩だけは譲れない。相手がルキだとしても絶対に諦めたりしない。

「くそっ…」

 俺は今日、生まれて初めてルキに勝ちたいと思った。


     [ vol.4 END ]

  ☆Symmetry vol.5


 ちょっとだけ《あとがき》

双子 第4話です
なんか兄弟喧嘩が勃発しちゃいました(笑)
ここまで、どうにも変態チックな双子の関係を書いて来ましたがf(^_^;)、 ようやく話が進みそうです
もう お分かり戴けたと思いますが、弘瀬は近親相姦ものが書きたかったわけじゃないんです
近親相姦…話的にはいいと思いますが、弘瀬的には確実に破局させてしまうと思います(笑)

というワケで(どういうワケだよっ)、ユキとルキと南雲先輩…この3人がどう絡んでいくのか、でもって誰が誰を好きなのか、次回から少しづつ見えてくると思います(笑)
なんて、わりとテンプレな話だと思うので、皆様はもうお見通しかもしれませんねf(^_^;)
何だか当初考えてた時より、長い話になってしまいそうな予感がする今日この頃…気長におつき合い戴けましたら幸いです
最後まで読んで戴いて ありがとぉございました<(_ _)>
 
 
     弘瀬 葵
 


 
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