「お、俺…」
答えは決まっているのに、何をどう言ったらいいのか分からない。
先輩を傷つけたくないなんて考えるのは俺の思い上りかもしれないけど、それでも断る以外の選択肢は無いんだからできるだけソフトな言い回しを探すしかなかった。
だけど、どんなに言葉を選んでもそれが拒絶の言葉であるのに変わりは無いんだ。 そう思うと、ますます何も言えなくなってしまう。
先輩のコト好きだから、俺なんかのせいで傷つくのは見たくない。
「俺は――」
「園田」
いきなり腕を掴まれて引き寄せられた。
一瞬のコトだったから抗う間もなくて、先輩の腕に巻き込まれるように抱き締められてしまった。
すぐに厚い胸板を両手で押し返したけど、俺よりずっと背が高くてスポーツ選手として出来上がった体の先輩の力の前では、俺は非力過ぎた。
「好きなんだ、園田」
抱きしめられた途端にハッキリと自覚した。
先輩は俺の憧れで、本当に好きだけど、こんなコトはされたくない。
俺の心の中は嫌悪感でいっぱいになっていく。
「先輩、俺は――」
身動きできない腕の中で、なんとか体を離そうともがく。
途端にその動きすら封じ込めるように掻き抱かれて、顎を掴まれ先輩の顔が近づいて来た。
何をしようとしているのか瞬時に気づいて、猶も力を籠めて押し返したけど先輩の腕の力は変わらない。
頬に触れた吐息に鳥肌がたった。
止めて欲しい。
冗談じゃない。
今すぐ放してくれ。
俺にこんなコトをして良いのは先輩じゃない。
だって俺は――
「園田っ!」
突然、教室のドアが蹴破られるような勢いで開いた。
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