V.
いきなり体を激しく揺さぶられて目が覚めた。
それと同時に、デジャ・ビュを感じて飛び起きた。
「お客さん、終点ですよ。ちゃんと降りてくださいね」
「あ…あ、すみません」
駅員だか、車掌だかに起これされて俺は慌てて電車を降りた。
ついさっき、同じようなことがあった気がして、雪の降りしきるホームでぼんやりと考える。
「あ、南松本の駅で……」
ウッカリ待合所でうたた寝したのを、通りがかりの人が起こしてくれたんだ。
と、言うコトは 俺は又しても寝てしまったらしい。
「……」
吹きさらしのホームは底冷えがして、あっという間に体温が奪われていくのが解る。
それと同時に 覚醒しきれていなかった頭が寒さのせいでハッキリしてきた。
「……えっ!? ここ どこだ?」
ようやく自分が どこの駅にいるのかすらわからない状況で雪の降りしきるホームに立っているのだと、気づいた。
慌てて駅名標を探してホームをウロウロすると、信濃大町と書かれた駅名標を見つけた。
信濃大町という 聞き覚えのない駅名にドキドキしながら、ケータイで検索すると、降りたかった穂高駅を思いっ切り通り越して、長野の近くにまで 逆戻りしていたコトが判明して、鼓動がより一層早くなる。
慌てて、何をどうしたらいいのか パニくりかけた時、孝輔の声が聞こえたような気がした。
『ホントに一人で大丈夫なんだな?』
孝輔に聞かれた時、俺は大丈夫って答えたんだ。
落ち着け。 降りたい駅を通り過ぎただけだ。
ふと落ち着いて見ると、俺が降り立ったホームのすぐ向かいに電車が止まっていた。 さっきまでは慌て過ぎてて 気がつかなかったけど…。