「部長には分からないんスよ、彼女持ちだから。 俺は今回の女子大生のモデルさんと仲良くなってその友達を紹介してもらおうと思ってたのに。 あぁ、くそ! 俺、なんで男子校なんかに入っちゃったんだろう」
本当に悔しそうに嘆く佐藤先輩に、みんなやや引き気味のような気がする。
「つか、誰が女子大生モデルだなんて言ったよ?」
「だって、去年は女子大生のお姉様だったじゃないっスか」
「毎年そうだって訳じゃねぇよ。 現に一昨年は主婦の人だったし」
「若奥様っスか? 俺的にはそっちの方がビンゴです」
いきなり話に割って入った坪倉先輩の頭に部長の手刀が振り下ろされた。
僕や他の一年は、何も言えずにただただ先輩達のやり取りを見つめる。
まだ一学期も終わっていない男子校歴4か月弱の僕達には、先輩達の話についていくのはなかなか厳しい。
「ったくよー、男のサガ剥き出しにしやがって。 一年生が引いてんの分からねぇのか?」
「こいつ等だって一年後には俺の気持ちを理解できるようになってますって。 いくら男子校だからって、先生はおろか、養護教諭から事務員まで男って有り得ないっすよ。 この世に地獄があるとしたら、それは正しくこの学校のコトっス」
芝居がかった佐藤先輩を見ていて、この人は美術部より演劇部の方が向いてるような気がしたのは僕だけだろうか?。
「とにかく、だ。 ドタキャンされたことをいつまでも嘆いてても埒が明かないんだから、モデルの代役立てるしかないよな」
面倒臭そうに呟いた部長の言葉に、僕と同じ一年の大木が手を上げた。
「デッサン会、中止にするんじゃないんですか?」
部長はニヤッと笑い、佐藤先輩を見やってから答える。
「俺は別に中止にしてもいいんだけどな、3年だし――」