太一の話が嘘でないコトは結有にも分かっている。 けれど、突然そんな話を面と向かって言われても、返事に困ってしまうではないか。
ついさっきまでのように寝たフリをして聞いているのとでは状況が違い過ぎる。
無言のまま顔すら上げられない結有の耳に太一の淋しそうな声が届いた。
「大丈夫だ、今更だってコトは分かってる。 それに、どう言い繕ったって俺がお前にしたコトは変わらねぇから」
「……」
「お前のコト、困らせるつもりはねぇよ。 でも、伝えておきたかったんだ」
「なに勝手なコトばっか言ってんだ」
太一に腕を掴まれたまま、視線も戻さずに結有は吐き捨てるように言った。
今更、太一の気持ちを聞かされても確かに困る。
困るのに、掴まれた手が振りほどけない。
「自分勝手だってのは分かってる。 でも、全部話して俺が結有に残してる未練を断ち切らねぇと…橘さんに申し訳ないから−−」
祥悟の名前を出されてカッとなり、振り返った結有は太一を睨みつけた。
「なんだよ、それ! 祥悟さんと二人で俺の気持ちを踏みにじるようなコトしといて、この上 祥悟さんに対する義理立てかなんか知らないけど、こんな今更なコトを俺に話すとか、どこまで俺のコトバカにしてんだよ。 俺はお前達のオモチャじゃないんだぞ」
「結有、お前なんか誤解してんだろ。 確かに俺達は知り合いだってコトをお前に隠してたけど、それはお前を傷つけるようなコトじゃねぇだろう?」
「何言ってんだ。 二人で俺が祥悟さんに落ちるか、賭けてたくせにっ!」
太一に掴まれた腕に顔を伏せるようにして、結有は泣きたい気持ちで叫んだ。
太一が何を言おうと、今の結有には何も信じるコトはできない。
祥悟は「騙していたわけじゃないよね?」と聞いた結有に頷いてはくれなかったのだから。