「……文化祭、一緒に回れなくってつまんなかった…」
折口の腕は俺を抱きしめたままで、髪に折口が擦りつけるように頬擦りするのが伝わってくる。
「ごめん…ごめん、園田……俺も園田と回りたかったな」
折口が謝るコトじゃないのにな。
寧ろ、謝るのは……。
「考えっこ無しに先輩についてって…ごめん」
そこから二人とも無言になった。
いつの間にか日が落ちて暗くなった教室の中、何も言わずに ただ二人で体を寄せ合って、それぞれの気持ちを確かめるみたいに抱き合い続ける。
何も言わなくても、お互いがお互いの特別なんだって全身から伝わるってくるような気がした。
折口の感触も体温も、俺の頭や腰に触れる掌もオーダーメイドみたいにしっくりくる。
世界に一つしか無いと思える感触が嬉しくて、ずっとこの感触だけを感じていたいと願って折口の肩で目を閉じる。
どのくらいそうしていたのか分からないけど、突然 運動場の方から小さな打ち上げ花火の音が響いた。
不意に聞こえた花火の音に二人同時に顔を上げると、しょぼい打ち上げ花火が何発が上がった後、窓の外が明るくなった。
続いて、お馴染みのフォークダンスの曲が流れ出すのを聞いて気がついた。
後夜祭が始まったんだ。
「始まったんだな、ファイヤーストーム」
二人して窓に駆け寄ると、運動場の真ん中で赤々と燃える炎を囲んでフォークダンスを踊る輪が見えた。
強烈にダサい光景に笑いが漏れる。
全員参加でもないのに、生徒の半数は確実に踊ってると思う。
「昨年も思ったけど、アレ踊るヤツって結構いるよな」
「堂々と女子と手ぇ繋げるからだろ? 俺だって園田と手ぇ繋げるなら踊ってもいいけど?」
マジでか!?
折口の衝撃発言に、つい吹き出した。
「折口が女子の列に並んでくれるんなら、踊ってもいいけど?」
「アホか! そんなコトしたら他の野郎たちとも手ぇ繋がなきゃならんだろ。 並ぶんなら園田が並べ」
「なんで俺が! お前こそアホなんじゃね?」
二人して笑い合った。
笑顔で視線を交わしていると、折口の指が俺の手に触れた。 そのままキュッと握りしめてくる。
「人前じゃ恥ずかしいけどさ…」