心が満ち足りていれば体も満足するのか、ここしばらくそういった衝動に駆られるコトも無く、自分で処理するような事態になるコトも無かった。
(俺ってこんなに淡白だったっけ?)
不意に太一とセフレだった頃を思い出した。
あの頃は三日と開けず太一と会っていた。 というコトは、そのくらいの頻度でセックスしていたコトになる。
それが今はどうだろう。
都合3か月はそういった行為をしていない勘定になるはずだ。
(枯れてるのは…むしろ俺の方か?)
今まで気づかずにいた自分の中の感情に結有は戸惑いを覚える。
一体、自分はどうしたいんだろう?
祥悟への想いが受け入れられただけで満足していたせいで、性的な欲求は完全に失念していた。
果たして自分は祥悟とそうなるだけの覚悟ができたのか?
ずっと気づかずにいた状況に、この先の二人の関係の在り方を考えなければならない時期が来たコトをなんとなく感じた。
(だけど…)
元はと言えば、結有のコトを思って祥悟が言い出した今のこの関係だ。
この状態を変えるには、状況的に言っても結有から言い出さなければ、何も変わるコトはないだろう。
(これって、俺から誘わなきゃダメだってコトか?)
思い至った現実に、思わず息を飲んで立ち尽くす。
自慢にはならないが、結有はこれまでセックスの誘いを自分からかけたコトなど無かった。
常に主導権は相手にあって結有はただ流れに身を任せていただけだった。
太一の時ですら向こうから誘いをかけてくるか、そうでなければなんとなくそんな雰囲気になってそのまま済し崩し的に体を重ねるのが慣例になっていて、結有が自分から何かをする必要性などまったくなかったのだ。
ただ一度だけ、祥悟を陥れてやろうと誘いをかけたが、あの時はものの見事に相手にされていない。
思い出したくもない前例があるだけに、自分から祥悟を誘わなければならないと分かった現状に、ただただ呆然とする。
そんな結有の肩に突然 軽い衝撃が走り、思わず前のめりになった。
そのせいで手にしていた避妊具の箱が滑り落ち、コトンと小さな音を立てて買い物カゴの中を転がった。
「あ、すみません」
結有の隣に並んだ若い男が、肩がぶつかったコトに謝罪してくる。