けれど問題は差し迫った性衝動ではなくて、結有が抱える不埒な願望を「如何に祥悟に伝えるか」だった。
今の現状を打破するには、結有自身から祥悟を誘わなければならないのはコンビニでトリップした時に十分理解していた。
だが、どうやって、となると何一つ思い浮かばない。
(いきなり襲いかかったら、間違いなく引く…よな?)
できもしない想像はするだけ無駄だが、そんなコトも分からないほど結有は混乱していた。
自分から誘ったコトなど今までの人生で一度もないのだから混乱するのも無理はないだろうが、そのせいで思考はどんどん縺れていく。
(エロ度の高いDVDでも一緒に見るとか?)
以前、洋画のラブシーンでそんな雰囲気になりかけたコトを思い出したが、祥悟が恋愛物のDVDを所有している確率は低い。
ここからさほど遠くない場所にレンタルショップがあるにはあるが、どちらか一人で借りるならともかく、男二人でラブロマンスは正直借りにくい。
かと言って、結有一人で借りに行くというのも難しいだろう。
今から出かけると言えば、祥悟は間違いなく着いてくる。
何せ、駅からここまで来るのが遅くなっただけで、あの心配のしようなのだから。
あらゆる面から考えて「この案はボツだ」とため息を吐いたが、すぐに新たな愚案を思いつく。
(そうだ。 さっき買ったスキンをお土産だって渡してみるとか?)
が、考えた直後に、自分の思いつきがあまりにもあざと過ぎると考えなおした。
だいたい自分に、あんな物を祥悟に手渡す勇気があるとは到底思えない。
切羽詰まると人間はできもしないコトを思いつくのだと、結有は自分の考えを心の中で笑った。
そうして何も良い考えが思い浮かばないままに、結有の思考はどんどん内へと沈んで行く。
下らない妄想にも似たそれに熱中するあまり、結有は祥悟の存在すら忘れかけていた。
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