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□『 True Love なんて いらない 』 完結9
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 けれど自分を抱き止めた祥悟の吐息が頬に触れ、ハッとする。
 しなだれかかるように祥悟に体を預け、その顔をジッと凝視している自分に唐突に気づいたからだ。
 物欲しそうな顔でもしているのではないかと恥かしくなり慌てて体を起こそうとしたが、バランスを崩した体勢で祥悟に抱き止められていたためにすぐには体を立て直せない。
 体を起こせないと知った結有は代りに、あまりにも近くにある祥悟の整った顔から頭ごと横を向いて目を逸らそうとした。
 が、そうする前に伸びて来た祥悟の手に顎を取られ、アッと思う間もなく唇が触れた。
 一瞬、体が固くなる。
 けれど柔らかく押し当てられる祥悟の唇の感触が気持ち良くて、抵抗を示した手はすぐに緩んでいく。 いや、元より抵抗するつもりなどなかったのだけれど。
 久しぶりの祥悟のキスは、簡単に結有を溶かしていった。
 くり返し触れる唇に結有の体から力が抜け切った頃を見計らうように、顎から祥悟の指が離れる。
 その喪失感にキスも終わりを告げるのかと残念に思った次の瞬間、首の後ろを強い力で掴まれ、唇がそれまでとは打って変わった荒々しさで押し付けられた。
 抗う間もなく祥悟の舌に唇を割られる。

「んうっ?」

 差し入れられた祥悟の舌が予想外過ぎて、思わずおかしな呻き声が漏れてしまった。
 こんなにも官能的なキスをされたのは、何時ぶりなんだろう。
 久しぶり過ぎてどう受け取ればいいのか分からずに、抜けたはずの体の力が再び入ってしまった結有は身を固くしたままキスを受け入れる。
 首をしっかりと押さえつけられ身動きできない結有の舌が吸い出され、舌先を甘噛みされると掴まれたままのうなじに痺れが走る。
 舌を絡められ粘膜同士が擦れ合う感触にぞわりと快感が沸き起こった。

(気持ちいい…かも…)

 神経を直接嬲られるような感覚に驚きも戸惑いも何もかもが霞んで行く。
 いつしか結有は与えられる官能に身を委ね、再び体が緩んで行くのを感じた。
 口腔を舐め回す舌の感触に体が震え、呼吸ごと絡め取られる息苦しさに喉声が漏れる。
 それでもキスを終わらせたくなくて、知らず知らずのうちに結有は自分から祥悟を求めて舌を差し出していた。
 祥悟の体を抱きしめたくて力の入らない腕をその背中に回そうと上げる。
 その途端、結有の腕をスルリと抜けてコンビニの袋が玄関の三和土に滑り落ちた。
 耳に届いたその音にハッとする。
 袋の中の電球が、落ちたはずみで割れたのではと気になった。
 思わず開いた瞳が三和土に向かって動いていく。
 そんな結有の躊躇いは祥悟に伝わってしまったようで、その瞬間 唐突にキスは終わりを告げた。

「あ…」

 与えられた時と同様に前触れもなく離れていく唇に言いようの無い淋しさを覚えて、結有の舌先は途方に暮れたように唇の上に留まった。

「ごめん。 結有の体に触ったら自制が効かなくなった」
 
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