昔からそうだった。
いつだってからかわれ、いいように振り回されて最後には香月の優しい仕草に懐柔されていた。
腹は立つものの、それがそんなに嫌じゃ無いコトが拓を余計に悔しくさせた。
「自分の方が年上なのに」そんな思いが脳裏を掠める。
「変だよな。 足の指の間って性感帯なのに、どうしてここだけダメなんだろ?」
「こんなトコが性感帯なんて聞いたコトないぞ」
いいかげんなコトをもっともらしく呟く香月の頭を小突いてやると、甘えるように拓の髪に頬を寄せて来た。
香月はよく拓の髪に触りたがる。
くせのないサラサラした拓の髪は細くてコシがないから触ると手の平に馴染むのだと、体を寄せ合っている時はいつも頭を撫でられる。
最初は子ども扱いされているようで慣れなかったが、今ではすっかり香月の手の感触に慣らされてしまった。
「知ってる? ここも性感帯だって」
拓の髪に差し入れた指先で地肌をマッサージするように撫でてくる。
「嘘っぽい…」
そう言いながらも、香月に頭を撫でられるのは確かに気持ちがいいと拓は香月の手を拒否することもなく、したいようにさせた。
「マジだって。 まぁ、拓の場合は感度良すぎて全身性感帯みたいなもんだから、どこ触っても感じちゃうよな?」
「誰がだ、バカ…」
拓の顔をのぞき込んでクスッと笑った香月の唇が額に押し付けられる。
柔らかな唇の感触に、思わず肩がピクンと震えた。
「ホント…エッチな体だよな…」
耳元で囁かれ、うなじの辺りがぞくりと戦慄いた。
香月の甘いテノールは拓の頭の中に響いて理性をかき乱す。
この声で囁かれると、拒否できなくなりそうだ。