「べっ、別に知りたいわけじゃ――」
含み笑いのままに颯生の耳に唇が寄せられ、耳たぶに軽く歯を立てられた。
「ん!」
肩がピクリと揺れる。
「初めて会った時、颯生の笑顔に一目惚れしたんだ」
「で、も…それ小1の時だろ?」
修斗の言葉に、逸らしたままだった視線を戻すと、上から優しい視線で颯生を見下ろし「そうだよ」と笑う。
その笑顔に、胸の奥の方がキュッと、切ない思いに震えた。
「颯生が好きだ。 笑うと糸目になっちゃうトコとか…」
と、言って、瞼にキスが落とされる。
「笑うとのぞく、八重歯とか…」
と、言って、顎を掴まれキスされる。
修斗の舌先が颯生の唇をなぞるように舐めた後、小さく開いた隙間から侵入して、颯生の八重歯をペロリと舐めた。
「そういうトコが好き」
「な、んで、そんなピンポイントなんだよ?」
好きな所が限定され過ぎていて、颯生が返事にも反応にも困っていると、修斗が笑い出した。
「あとは…颯生の全部が好き」
何だか、上手いコト端折られたような気がして、ホンの少しだけ湧き上がる拗ねたような感情が颯生の唇を尖らせた。 その唇に修斗はわざとリップ音を立ててキスすると、颯生の体を抱き上げた。
その不安定な浮遊感に、颯生は慌てて修斗の肩にしがみ付いた。
「あ、危ないって、下ろせ――」
「颯生は、チビで軽いから落としたりしないって」
「チビは余計だ――うわっ!」
抗議の言葉を口にした途端、ベッドの上に放り投げられ、柔らかなスプリングに受け止められた体を起こす間もなく 修斗が覆いかぶさってくる。
「颯生…好き」
唇に吐息が触れ、それを追いかけるようにキスが落とされると、颯生の体が震えた。
無知故に、これから始まることへの恐怖心が 無意識に取らせた動きだった。
「…颯生………颯生……」
修斗が何度も何度も颯生の名前を呼びながら、瞼に、頬に、髪に、何の法則もないままにキスの雨を降らせ続けて行くうちに、颯生の体から徐々に力が抜けて行く。
最後に、小さな音を立てて唇にキスをすると、修斗は颯生の体をギュッと抱きしめた。