Other Novel

□空に溶けて
1ページ/1ページ


*設定\高3。恋人。




 吸い込まれそうな青空の下、屋上で昼食を済ませてのんびりと2人座る。

 あったかいね、と隣で里奈が微笑んだ。



「お昼食べたあとだと眠くなる」

「私、屋上でお昼食べたの初めてだったよ。気持ちいいね」



 そう言って目をつぶる里奈も、悠太と同じく眠たそうだ。

 ちょんちょんと里奈の肩をつつく。



「なあに?」

「膝枕、してあげよっか」

「えっ!」



 戸惑いに見開かれた目が泳いで、どんどん頬が朱に染まっていく。



「わ、私が膝に乗るの?」

「まあ気軽に、遠慮せず」

「で、でも、重いよ?」

「そんなにヤワじゃないし、重くもないよ」



 いつも祐希引きずって歩いてるんですよ、と言えば里奈がおかしそうにコロコロ笑う。



「じゃあ、少しだけお願いします」



 お邪魔します、とおっかなびっくりで悠太の膝に慎重に頭をのせる。

 だが、まったく重みを感じない。

 悠太は「高橋さん」と声をかけた。



「力、抜いて平気だから」

「あう、でも」

「抜かないなら……」



 少しだけ、右手でいじわるをしてみる。



「ひゃっ」



 ちょいっと里奈の横腹あたりをつついてみると、小さな悲鳴をあげた里奈の頭が一瞬だけ浮いて、膝にコテッと落ちる。



「全然重くないよ」

「ゆ、悠太くんのいじわる……」



 真っ赤になって両手で顔を隠してしまう。

 それが可愛くて、つい笑みがこぼれた。



「―――あ、でも気持ちいいね。膝枕」

「それは良かった」

「うん。あったかくて落ち着く」



 悠太くん、お父さんみたい。


 聞き捨てならないセリフが里奈から聞こえて、悠太は下で横になる彼女を見下ろした。



「え、なに。お父さん……?」

「うん。おっきくて、安心できて、頼りがいがあって、器も大きくて。良いお父さんって感じがする」



 果たしてそれは喜ぶべきなのか、彼氏として悲しむべきなのか。

 複雑な悠太を余所に、里奈はうつらうつらと眠たげな舌で続ける。



「だから、悠太くんがお父さんな子どもは、幸せだね」



 まるで他人ごとのように言うものだから、悠太は声に不満の色を含ませた。



「……高橋さんがお母さんだったら、子どもはもっと幸せだよ」



 そう小さく言うと、里奈は嬉しそうに顔をほころばせた。



「……じゃあ、私も幸せだね……」



 何の迷いも躊躇いもなく、当然のように繋がれた言葉に、悠太は目を瞠った。



「高橋さん……?」



 すう、と里奈は気持ちよさそうに寝息を立てていて、悠太は片手で顔をおさえて空を仰いだ。

 顔が、熱い。



「……俺も、幸せです」



 その呟きは、青く染まった空に溶けて消えた。










FIN.





さり気なくいちゃついてるって可愛いと思うの。
高橋さんがゆうたんに膝枕するver.も書きたいです。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ