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□空に溶けて
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*設定\高3。恋人。
吸い込まれそうな青空の下、屋上で昼食を済ませてのんびりと2人座る。
あったかいね、と隣で里奈が微笑んだ。
「お昼食べたあとだと眠くなる」
「私、屋上でお昼食べたの初めてだったよ。気持ちいいね」
そう言って目をつぶる里奈も、悠太と同じく眠たそうだ。
ちょんちょんと里奈の肩をつつく。
「なあに?」
「膝枕、してあげよっか」
「えっ!」
戸惑いに見開かれた目が泳いで、どんどん頬が朱に染まっていく。
「わ、私が膝に乗るの?」
「まあ気軽に、遠慮せず」
「で、でも、重いよ?」
「そんなにヤワじゃないし、重くもないよ」
いつも祐希引きずって歩いてるんですよ、と言えば里奈がおかしそうにコロコロ笑う。
「じゃあ、少しだけお願いします」
お邪魔します、とおっかなびっくりで悠太の膝に慎重に頭をのせる。
だが、まったく重みを感じない。
悠太は「高橋さん」と声をかけた。
「力、抜いて平気だから」
「あう、でも」
「抜かないなら……」
少しだけ、右手でいじわるをしてみる。
「ひゃっ」
ちょいっと里奈の横腹あたりをつついてみると、小さな悲鳴をあげた里奈の頭が一瞬だけ浮いて、膝にコテッと落ちる。
「全然重くないよ」
「ゆ、悠太くんのいじわる……」
真っ赤になって両手で顔を隠してしまう。
それが可愛くて、つい笑みがこぼれた。
「―――あ、でも気持ちいいね。膝枕」
「それは良かった」
「うん。あったかくて落ち着く」
悠太くん、お父さんみたい。
聞き捨てならないセリフが里奈から聞こえて、悠太は下で横になる彼女を見下ろした。
「え、なに。お父さん……?」
「うん。おっきくて、安心できて、頼りがいがあって、器も大きくて。良いお父さんって感じがする」
果たしてそれは喜ぶべきなのか、彼氏として悲しむべきなのか。
複雑な悠太を余所に、里奈はうつらうつらと眠たげな舌で続ける。
「だから、悠太くんがお父さんな子どもは、幸せだね」
まるで他人ごとのように言うものだから、悠太は声に不満の色を含ませた。
「……高橋さんがお母さんだったら、子どもはもっと幸せだよ」
そう小さく言うと、里奈は嬉しそうに顔をほころばせた。
「……じゃあ、私も幸せだね……」
何の迷いも躊躇いもなく、当然のように繋がれた言葉に、悠太は目を瞠った。
「高橋さん……?」
すう、と里奈は気持ちよさそうに寝息を立てていて、悠太は片手で顔をおさえて空を仰いだ。
顔が、熱い。
「……俺も、幸せです」
その呟きは、青く染まった空に溶けて消えた。
FIN.
さり気なくいちゃついてるって可愛いと思うの。
高橋さんがゆうたんに膝枕するver.も書きたいです。