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□天体観測
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『天体観測』



 あかりが空を見上げると星がいくつか瞬いていた。

 冬の空は空気が澄んでいて星がよく見える。

 星座にでも詳しければもうちょっと楽しめるのに、などと思いながらもなかなか覚えるまでに踏み込めない。

 寒さで手がかじかみ、はあっと息をかけるが気休め程度だ。一瞬空気に白い靄がかかり消えた。

 コンビニが見えて気が付くと肉まんをひとつ買ってしまっていた。

 太っちゃうかなと懸念に思うのは年頃だ。

 アツアツの肉まんを両手で持ってかぶりつく。

 大きくかぶりつき過ぎて口の中が熱い。

 熱い肉汁で口の中が火傷しそうになり、はふはふと口を開閉させる。

 少し冷めると美味しさに顔がほころんだ。

「もーらい!」

「え、あ、ヒカル!」

 ヒョイと横から肉まんを奪われ横を見るとヒカルが奪った肉まんにかじり付いている。

「私の肉まん!」

「ケチくさいこと言うなって、ホラ」

「むぐッ、あふいぃ!」

 まだ冷めていない熱い肉まんを開いた口に突っ込まれ思わずくぐもった声で叫ぶ。

「も〜……」

「お前こんな時間に何してんの?」

「久美子と遊んでたの、帰り遅くなっちゃって。ヒカルは?」

 ここは地元ではない駅付近の住宅街だ。

 思わぬ恋人の登場に内心かなり謎である。

「んー? 知り合いに指導碁頼まれてさ。その帰り」

「そっか」

 納得がいきヒカルの手から肉まんを取り袋から出し、半分にしてヒカルに渡した。

「いいのか?」

「食べきれないから」

 じゃあ遠慮なく、とヒカルはあっという間に平らげた。

「食べるのはやー……」

「あかりが遅いの」

「えー、ヒカルがはやいんだよ」

 軽口を言い合いながら路地を歩く。
 時折の沈黙すらも心地よいのは相手がヒカルだからだろうか。



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