shortstory

□からかい
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「いやぁ、私の恋ネタはからかえないわよ。何せこんな可愛い女の子に目もくれず好きな事に一直線なオヤジだもん」

 イタズラっぽく言うと、晶はコピー紙を拾うためにしゃがんだままの大勢で顔を上げた。

 その顔が素でキョトンとしているので碧も「あれ?」と固まった。

 あらー、なんか外したかな私。

 晶は怪訝に首を傾げて口を開いた。

「別に……好きにネタも何もないんじゃないですか」


 言葉に詰まった。

 唖然として固まる碧に気づかず晶は淡々と印刷作業をこなす。

 これは―――負けちゃったかな、純情少女に。

 こんな単純な言葉で返されるなんてと思いつつ少し嬉しい。

 研究馬鹿のオヤジが好きでも、好きなんだから胸張って想ってれば良いんだ。

 一生懸命な背中、真剣な横顔、野望を抱く若々しいまでの好奇心。

 張り上げたあの声で自分の名前を呼ばれた時は何でもできるような気持ちになる。

 新しい発見に子供みたいに喜ぶところを見たらこっちまで嬉しくなる。

 真っ直ぐな気持ちを、私は貫く。

「晶ちゃん、良い子だね」

「だから晶ちゃん言わんでくださいッ!」

「ええ〜詩帆ちゃんには呼ばせてるじゃなーい」

「時と場所を選んでくれ! 他の生徒に聞かれたら困る!」

「大丈夫大丈夫、バレないバレない!」

「あのなぁ……」

「あらぁ、そんな口利いていいの? さっきの台詞巧海君にバラしてもいいんだけど?」

「教師の癖して生徒脅す気ですか!?」

「あら人聞きの悪い、処世術よ」

「ど・こ・が・だ!」

 コピーの終わりの音が鳴ったと同時にガラッと印刷室のドアが開いた。

「あ、晶くん。やっと見つけた」

「げ、巧海」

「げ? げって何晶くん」

「い、いや……」

 しまった今のは滑らし方が悪かった、などと思っても後の祭りだ。

 案の定巧海は不機嫌に晶に歩み寄り晶は後ろに引く。

「てか何でお前ここに」

「一緒に帰ろうと思って。訊いたら杉浦先生と印刷室に入ってく所見た人がいたから」

「あ、ああ悪い」

 ちらりと碧の方へと目線をやればニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを窺っている。

「巧海くーん、今尾久崎クンと話してたんだけどねぇ」

「ココココ、コピーッ! コピー終わったんで帰ります!! 行くぞ巧海ッ」

「ええ、何話してか聞きたい」

「知らなくて良い!!」

 真っ赤なまま巧海を睨みつけ、渋る巧海を引っ張り出しドアを力任せに閉めた。

 愛らしい恋人達に碧はクスリと笑って印刷室の電気を消す。

「―――久しぶりにメールでもしよっかな」

 返事なんか期待できないけど、と苦笑しつつも印刷室を出る足は軽かった。


「ねえねえさっきの"げ"って何?」

「大した事じゃない」

「……晶くーん」

「!? バカここ廊下だぞ!」

「じゃあ教えてくれる?」

「い、いやそれは―――て近い近い近いッ!」

「教えてくれなきゃキスする」

「―――っバッカやろう!!」

 その後、巧海を説得するのに随分と苦戦する晶であった。










FIN.




からかわれキャラな晶くんはわたしのなかでテンプレです。うふふ、かわいい♡
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