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□惚れた弱みに逆らう術を僕は知らない
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 里奈は新しいパジャマに着替えて布団にもぐっていたが、寝苦しいのかウトウトしているだけだった。



「食欲無いかもしれないけど、お粥半分は食べて。りんごも切ってきたから、食べ終わったら薬飲んでね」

「はんぶん……おおい」

「治すためですよ。頑張って」

「うう。……じゃあ」



 悠太くんが食べさせて。


 合わさった目を逸らさず、熱に浮かされ潤んだ瞳が悠太を捕らえて離さない。

 普段なら有り得ない珍事で可愛くてたまらない―――というか凄まじい破壊力である。



「え、えー…と、たかはしさん?」

「いや……?」

「―――わかり、ました」



 相手は病人だとわかっていても理性を保つのはなかなか大変―――と、今身に染みて感じる。

 けれど弱りきった彼女が涙目で訴えてくるのだ、惚れた弱みに逆らう術を悠太は知らない。

 器から粥をひと匙掬って冷ましてから里奈の口元に運ぶと、弱々しく開いた口がお粥を含む。

 何とも無防備な姿が悠太の理性を揺さぶるが、生まれながらの辛抱強さで耐え抜いた。

 ようやく薬を飲ませて生殺し状態から解放されると息を吐いた直後、とんでもない第二射が放たれた。


 食べ終えた食器類を持って部屋から出ようとすると、弱い力で服が引かれた。

 振り向くと、里奈が不安げに瞳を揺らせて見つめてくる。



「やだ、ひとりにしないで……」



 グラグラグラグラ。


 音を立てて理性が激しく揺れる。

 彼女の風邪とはこんなにも彼氏ポジションの男に優しくない菌なのだろうか。


 硬直したまま悶々と葛藤していると、熱で涙腺が緩んでいるらしい里奈の双眸に涙がたまる。

 ビクッと肩を揺らした悠太に、里奈が「ワガママ言ってごめんなさい」と呂律の回らない舌で謝った。


 ああもう、―――泣きたいのはこっちだ。



「……わかりました」

「ゆう……」



 里奈の目元に溜まっている涙を拭って、ため息を大きく吐いた。

 安心したように表情を和らげた里奈の横に滑り込んで、彼女を優しく抱きしめて耳元で囁く。



「―――元気になったら、責任とってもらうからね」



 ふにゃりと笑顔で頷いた里奈は朦朧としていて、大して意味を理解出来ていないだろう。

 だが悠太はこれを契約として、ありったけの理性をかき集めて里奈を温めた。


 ―――後日、風邪の治った里奈が覚えのない約束の責任を悠太にとらされたのは、また別のお話し。










FIN.






風邪ひいた女の子の破壊力はハンパない、なベタ設定が好物です。
無防備な高橋さんに理性グラグラな悠太くんとか萌える。
あああああぁぁぁぁ、誰か文才くれええええぇぇぇ!!(爆)
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