shortstory
□幸せを君の隣で
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*晶監禁設定。巧海復活直後。
意識が靄になって集まる。
浮遊感が薄れて消え去り、しっかりとした五感が戻る。
やけに軽い瞼を開けると、暗くて埃っぽい場所にいることに気づいた。
古びた木の質感に、どこだろうと纏まらない思考が動き始める。
自分は晶の想い人として消えたはずなのに、死んだにしては生身の感覚に似すぎている。
「―――たく、み」
か細い、震えた声。
顔を上げると、もう会えないはずの少女がさらし姿で柱に両手を括り付けられていた。
「あき、らくん。―――っな、なんでそんな恰好で……!?」
「……っこ、これは、戦いに敗れた罰で! 良いからほどけ!」
「わ、わかった」
何やら頑丈に縛られた縄は、到底巧海に解けるような結び目ではない。
何か切れる物はないかと辺りにある箱を開けると、クナイや手裏剣といった忍びの道具が入っている。
手頃なモノをとって柱の縄を切った。
「……巧海、だよな」
「た、たぶん?」
「は?」
「いや、僕もよくわからなくて……死んでないみたいだね」
巧海は思ったことを言っただけだが、晶は顔を歪めた。
傷つけた。否、傷を抉った。
直感でそう思った巧海は狼狽えたが、晶はすぐに気を取り直した。
「とにかくここ出るぞ、立てるか?」
「う、うん。ところでここは……」
「俺んちの蔵。身体冷えるだろ、すぐに寝床を用意させる」
晶に支えられながら何とか立ち上がる。
身体が驚いているのか、上手く力が入らない。
そんな巧海を急かすこともなく、晶は一歩一歩を慎重に進める。
仰々しい蔵の扉を晶が開けると、見たこともない立派な屋敷が広がっていた。
外はひんやりと冷え込んでいて、空には星が散らばっている。
「あ、晶さま!」
蔵の前に立っていた2人の忍びが目を剥いて晶と巧海を見る。
晶はそれに構うことなく「父上を呼んでくれ」と命令した。
「力が戻った。媛の祀りを終わらせられるかもしれない―――早く!」
見張り番の黒装束を纏った男が返事と共に消える。
目まぐるしく変わる場面に巧海は頭が着いていけない。
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