shortstory

□天気
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 巧海はよく当たるというが、晶は少し違うと思っている。

 雑誌やテレビの占いと似たような物で、占いの結果が現実になった時は印象が深く記憶に残りやすい。

 だから"よく当たる"なのだ。

 とは言えそんな野暮な事を言うほど無骨でもない。

 それに晶もそういったことは嫌いじゃないし、テレビで占いがやっていれば目にとめる。

 今日は××に注意、などと聴けば意外と役にたったりもするしなかなか面白い。

 占いなどで一喜一憂するのも粋である。

「明日、晴れるかな」

「あのコが晴れっつってたから晴れんじゃねーの」

「―――雨、だったら晶くん平気?」

 立ち止まった巧海に繋いだ手がつっかえて晶の足も自然と止まる。

 雨は晶にとって苦い記憶の塊だ。

「……お前がいれば、平気だ」

 優しく微笑む晶に巧海も安心して微笑み返す。

「まだちょっとな、苦手だけど。お前がいたら平気」

「僕、絶対傍にいるから」

 頼りにしてる、と素っ気なく言い投げて晶は巧海を引っ張るように歩き出す。

 その頬が少し赤い。
 言ってから照れたのだろう。

「映画見終わったらどこか行く?」

「手芸屋行っていいか? ビーズ買いたい」

「ビーズ?」

「こないだテレビでやっててさ、ビーズアクセ。やってみたくて」

「わかった。じゃあ映画見て手芸屋さん寄ってどこかでお茶して帰ろ」

「ん」

 ふとした瞬間に痛む古傷は少しずつだが癒えている。

 闇に怯える夜も巧海がいれば自然と怖く無くなる。

 こんなに好きなのが自分でもたまに悔しくなるが、それでも好きなことをとっくに認めているのだから幸せボケか。

 好き。

 それを認める事が晶には酷く難しかった。

 今まで男として生きてきた。

 意地でも男に負けたくはなかった。

 弱い奴は嫌いだったし、いい加減な奴には容赦などしない。

 なのに軟弱で女々しい巧海に惹かれていく自分がいた。

 まるで自分と真逆な巧海。

 嫌いになろうとしてもなれない、その事に気づきたくなくてまた罵る。

 それでも想いは募るだけ。

 認められない強情な自分はもしかしたらあの祭が無ければずっと無意識に気づかないように線を張っていたかもしれない。

 皮肉なもので、失わなければわからないことは嫌と言うほどある。

 晶の恋は正にそうだったのかもしれない。

「あー……、くそぉ」

「晶くん?」

「アイス食うぞ、奢れ」

「え、何で」

「いいから奢れ」

「うん……?」

 訳がわからないがとりあえず頷いておく。
 この暑さでアイスが食べたいのは巧海も同じだ。

「行くぞ!ちゃっちゃと歩け!」

「あ、晶くーん。なんで不機嫌なの〜?」

 わけがわからず晶の背に向かってに訊く巧海の声は困って焦っている。―――せいぜい困りやがれこの野郎!

 なんとなく負けてる気がして拗ねているなどとは口が裂けても言えない。

 ああっ、口が裂けたって言わねえ!!

「晶くんってばー」

「知らねえッ!」

 お天道様が見守る中、恋人たちは仲良く言い合い手を繋いで歩く。


 明日天気になーあれ。

 でも本当はね、君が隣にいてくれたらなんだっていいんだよ。

 晴れたら外にでかけようか。

 雨だったら室内でゴロゴロするのもいいね。

 曇りだったらまた映画にでも来よう。

 雷だったらお臍を取られないように隠し合おうか?


 ほら、君がいたらなんでも幸せ。










FIN.




あーしたてんきになぁれ♪
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