shortstory

□変わらぬ2人に愛の時間を
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*大学生/巧海1人暮らし。2人がイチャイチャしてます。










 んっ、とキスの合間に漏れた晶の声に鼓膜が震える。

 力無く叩かれる肩は、苦しいから離せという晶の主張だ。

 名残惜しくも深く絡めていた舌を離し、晶のやわくぷっくりとした舌先をチュッと吸ってから解放してやる。

 びくりと跳ねた肩と同時に「ふぁ、」と普段の晶からは想像もつかない声がこぼれた。

 巧海しか聴いたことのない、女の子の声。

 力が抜けて、驚くほど弱々しい晶が荒い呼吸で巧海にもたれかかる。

 と、目に見えぬ速さで晶の右手が飛んできた。



「痛っ」

「っの、ばか! ケーキ食ってるときに何すんだ!」

「何って、キス」

「言わんでもわかるわ、そんなこと!」

「別にいいじゃない。恋人の誕生日にキスするくらい」

「誕生日関係ないだろ、お前の場合は!」

「だって、したいんだもん」

「だもんってお前……それでも二十歳の男か?」

「もちろん」



 にっこりと微笑めば、がくりと晶は肩を落とした。

 大学生になって一人暮らしを始めた巧海のアパートに晶が来たのは今日が初めてのことだ。

 外で会うことはあったが、家に招くことは今までしなかったのだ。


 ―――さすがに、この歳になって手を出さない自信なんて欠片もないからなぁ。


 ぷりぷりと怒って食べかけのケーキにフォークを刺した晶は、きっと自分の身に迫っている事態に気づいていないだろう。

 鋭いのか鈍いのか、はたまた鈍く演じて巧海の欲望をかわしていたのか、未だに謎だ。


 ケーキを綺麗に平らげた晶は、「美味かった」と手を合わせる。



「また腕上げたか?」

「最近ケーキ屋さんでバイト始めてね、色々コツとか聞いてるんだ。お店継がないかって言われちゃった」



 駅近の個人店であるケーキ屋は50代の夫婦で経営していて、唯一の一人息子は菓子作りには目覚めなかったらしい。

 今息子は結婚して、会社で経理の仕事をしていると聞いた。



「ふぅん。お前才能あるのかもな」

「でもプロ目指す気はないなぁ。趣味で好きにやりたい」

「そっか」



 相槌を打った晶の肩に長い黒髪が流れる。

 指通りの良い髪に左手で触れた。



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