「あ、雨。」




 ぽつぽつと静かに振りだした雨。

 傘持ってねェやなんて思いながら

 雨宿りしていた。今日は厄日か。

 先程から鳴ってる携帯など気にせ

 ず俺はぼーっと雨を眺めた。意味

 は無い。少し濡れて前髪から滴が

 垂れた。こんな時に雨。何故今日

 に限って雨なんでィ。カラッと晴

 てりゃ少しは気が楽だってのに、

 厄日だ。今日は厄日だ。朝から胸

 糞悪ィ事しか起きねェ。あーあ。

 どうせ死ぬなら晴れた日に死ねば

 良かったのに。何が監察でしくじ

 っただ。何お前がしくじってんだ

 何あっさり、死んでんだ。なにが

 私は隊長より長生き出来ますよー

 だ。死んでんじゃねーか。嘘っぱ

 ち野郎。


 『風邪引きますよ。何泣いてんで
  すか。隊長らしくないですよ』

 「泣いてなんか、」

 『ほら、雨止みましたよ。葬式ぐ
  らいサボらず来てくださいよ』


 雨が止んだ。静かに止んだ。馬鹿

 みてェに止んだ。俺は携帯を取り

 出して電話に出た。また、雨が振

 りだす前に俺は屯所まで走った。

 きっとあの馬鹿は泣く俺に馬鹿だ

 と笑い飛ばすだろう。んなもんあ

 の馬鹿にされてたまるか。俺が死

 んだらあの馬鹿調教してやらァ。

 それまで待ってろィ。長生きして

 短いお前の人生笑い飛ばしてやる


 『ははっ、隊長はそんなに簡単に
  死にませんよ。なんたって私の
  一生で一番好きな人ですから 』



    空に笑ってやったんだ


    今にもきそうな空に、




  隊長!何でィ。雨、止みましたよ!



  短けェけど綺麗な人生だったねィ。







 

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