一護×雨竜

□あいのうた
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「         」

机に向けていた顔を上げると、石田が不思議そうな顔で立っていた。






あいのうた







「あ、ワリィ。何か言ったか?」

イヤホンをしていたから石田が何か言ったのをうまく聞き取れなかった。

「何を聴いてるんだ?」

きっと、さっき言ったことを繰り返したんだと思う。
嫌な顔をせず、同じことをまた繰り返し言ってくれる
こういう時の石田は機嫌が良い。というのは付き合いだしてからわかったことだ。


「聴くか?」

片方のイヤホンを石田に差し出すと素直に受け取り自分の耳へ。


「…………聴いたことないな」

「あんまり知られてない曲かもな」

「そもそも僕あまり音楽は聴かないから有名でもわからないと思うけどね」

と、苦笑した石田がなんか可愛くて、しばらくほうけていたら


「…歌詞」

「えっ?」

「なんか、切ないね」

「あぁ…。失恋ソングだから」

「黒崎、失恋でもしたのか?」

「お前にフラれた記憶ないんだけど」


冗談だよ
 と、石田は笑った。

今日はホントに何があったんだろう。こんなにオレに対して笑うなんて滅多にない。(恋人に対してどうかと思うが)


「黒崎はこういう曲聴くのか」

「や、普段は全然ジャンル違うな。これは特別」

「特別?」


曲の内容は
 気持ちを伝えたくて、でも伝えられなくて。伝えられないまま卒業してしまった 数年後、再会した時には相手にはもう大切な人がいて…


「なんか……オレ、伝えて良かったなって」

「他人の不幸を喜んでるのか?」

「自分の幸せを喜んでるんだよ。それに、そいつが不幸とは限らないだろ?」


そう言ったら石田は、少し考えた後、やっぱり笑って「そうかもしれないね」と言った。


「なんか、良いことあったのか?」

「…僕もね、お気に入りの曲を見つけたんだ」

良かったら今日これから聴きに来ない?

なんて言われて、断るヤツがどこにいるんだ。
…………いや、オレ以外は断れ。


「たまたま行った手芸屋で流れていてね。メロディも良かったんだけど歌詞がすごくて」

「すごい…?」

「すごい」


と、石田は微笑んで。





君のことが大嫌いだった
なにもかもが噛み合わなくて
ずっとずっと嫌いなんだと
そう思っていた、のに

一緒にいるうちに君のことをたくさん知って
いつの間にか君と こんなにも
キョリは近づいて
嫌いな君が好きに変わる瞬間
こんなにも君が愛おしくて―…









赤面するオレに、石田は「照れるね」なんて言いながら、幸せそうに笑った。










END
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