一護×雨竜

□幸せな時間
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どうしても
お前の声が聞きたくなって







せな時間








ついこの間 聞いたばかりの携帯の番号。
かけるのは今日が初めてってわけじゃないのに 柄にもなくこんなに緊張しているのは
少し期待をしてしまっているから。


数回のコール音の後
聞こえたのはもちろん あいつの声。


『もしもし?』

「あ、と。よ!石田」


あれ、いつもはどんな風にしてたっけ?


「わりぃ、寝てたか?」

『……いや、本を読んでいたから』

「そ、そか…」


……やべ、何話そう。
話さないと石田がキレて電話も切られてしまう。…ダジャレ考えてる場合じゃねぇよ。

話したいこと ないわけじゃねぇけど、今はまだ早くて
けど、素直に言えば 石田は
ちゃんと聞いてくれるだろうか?

『黒崎?』

「あ!いや、あの…な、なんか石田話すこととかねーか!?」


うわ、オレ バカだな。
自分からかけといて何石田になげてんだ。
これじゃあマジで電話切られて−…


『フフ…そうだね、何話そうか』

「え!?」

『黒崎、明日提出の課題は済んだのか?』

「え、あぁ…出された日にやったから…」

『さすが。エライエライ』


電話の向こうで石田が笑っている。
なんだこれは。いつもなら「バカにすんなよ」って言えるのに、どうしたんだ オレ。

………オレ?
これは、オレが変、なのか?


「い、石田?」

『なんだい?』

「なんか…あったのか?」

『なんか、って、どうして?』


どうして と、聞かれれば それは
ハッキリとは言えないが、なんかこう………


「石田が、優しい…」

『失礼だな。いつもは優しくないみたいじゃないか』

「やっ!そういう意味じゃ−…」

『うん。わかってるよ』


ほら、やっぱり。
声が 機械を通しているのに こんなにもやわらかくて、優しい。
顔を見なくても、石田が微笑んでいるのがわかる。


『何かあるのは、君の方だろう』

「え?」

『君は、電話だけで いいのかい?』


暑い夏の夜。
風を通すために 少し開けていた窓。
エアコンがあるけれど、今日はなんだか風に当たりたくて。


綺麗な星空


『今日は、星がよく見えるね』


あぁ、同じ事 同時に考えてたんだな…と、嬉しくなって
窓から少し顔を出す。


『お風呂から出たばかり?いくら夏だからってそのままにしておくと風邪を引くよ』


………………え?


「エスパー…?」

『ぶっ!!』


石田が盛大に噴き出したのがわかった。
いや、だって…え!?


目線を空から地へ。
なぜ、気が付かなかったんだ。


『こんな夜中に失礼かなとは思ったんだけど』

「ッ!!今すぐ行く!」


親父や妹たちを起こさないように 階段を下りて、玄関のドアを開ける。

電話はまだ 繋がっていて


『こんばんは、黒崎』


耳元から聞こえる声
だけじゃなくて、目の前の声が重なって。

お互い電話を切る。


「お前……なんで。いつから…?」

「君がかけてきた時にはもう歩いていたよ。」

「こんな夜中を!?あぶねーな!」

「虚の気配はなかったし…」

「変質者とかいたらどうすんだよ!」

「…僕、男なんだけど」


いやいや、石田の場合はマジであぶねーから。
そんなオレの心配をよそに石田は「僕を襲うなんて良い度胸してるよね」なんて言い出した。
オレを見ている気がするのは、きっと気のせいだ。


「…なんで、来てくれたんだ?」

「………本当はね、電話でいいかな…と、思ったんだけど…」



そんな言い方。
だってそれは、期待しても いいんだろ…?


「声だけじゃ…な、と思って。思ったら、いつの間にか家を出ていて、君から電話があって。」


オレはずっと黙ったまま。
視線はずっと 石田に向けて。


「君、わかりやすいよね。わかりやすすぎて可笑しくなっちゃって……」


石田の顔は 少し紅いような気がする
多分 きっと それは オレも同じで


「……小さな子供みたいかもしれないけど、1番に君に言いたかったんだ」


石田は腕の時計を見て
 時間を確認すると、少しずつオレに近づく。

今度は、石田の顔がすげー近くなって、見えなくなる。

唇には温かい 柔らかな感触。



石田からの キス は 初めて で−…。



「誕生日おめでとう、黒崎…」


そう、微笑みながら


「………………」

「…顔、真っ赤だ」


そんなの…わかってんだ……
それに……


「お前もな…」

「自分からしたくせにね。今、結構恥ずかしいんだ…」


ただ、オレは 今日という日を
石田が覚えていてくれたら嬉しいな って思ってた。
あわよくば「おめでとう」なんて言ってもらえたら と…。


それなのに、石田は、会いに来てくれた。
微笑んでくれて キスをしてくれた。


「ケーキ…作ってあるんだけど……余計だったかな…」


ケーキ まで 作ってくれていたなんて。

こんな こんな、幸せな誕生日なんて


「夢じゃねェだろうな…」


と、呟いた言葉が石田に聞こえていたらしく、


「特別…な日、だからね。君がどうしたら喜んでくれるか、悩んだ末に…その……………僕だったら…って考えて…」

「え…それ…って」


つまり、石田がオレにされたら、嬉しいこと…?


「僕と君とじゃ、違うよね、きっと…本当にごめん」

「バカ、何謝ってんだよ」


嬉しすぎて、柄にもなく涙が出そうで
そんな顔を見られるのが恥ずかしくて 石田を引き寄せ抱きしめた。


「くろ…っ!!」

「ありがとう、石田……」

「今日の君、いつも以上に面白いね。緊張して声震えてるし、ちょっと涙目だし」


あ、なんだ。バレてた。


「うるせー」

「でもね、そんな君も−…」







石田からの甘い言葉。

今度は お互い 惹かれるように キスをした。










【そんな君も 大好きなんだ】




Happy Birthday!
 Ichigo Kurosaki







END
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