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□源佐久
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嘘と真





「源田」


学校の廊下を歩いている時にふと、聞こえた聞き覚えのある少し高めのトーンの声が俺を呼ぶ


ゆっくり後ろを向くと
佐久間が俺に小さく微笑みかけながらじっと俺を見ていた

「…なんだ?」

「えへへー」


小走りをしながら俺に近づくと、俺の胸板に顔を押し付け背中に手をまわすようにして抱きついてきた


「よしよし」

「源田好きー」


佐久間をゆっくり抱きしめると、骨が浮き出て抱き心地がいまいちであった


そう、佐久間は極端に細い

腕おろか腰、足
すべてが細くて少し強く抱きしめるとキシッと骨の軋む音がしてすぐに折れてしまいそうだ。


試合中に佐久間がボールを当てられると骨が折れてないかとおどおどする毎日である


「…女みたいだな」

「むっ」

「もう少し肉をつけたらどうだ?」

「だって食べれないんだもん」

「折れるだろ」

「折れたっていいしー」


スリスリと胸板に擦りついてくる佐久間の柔らかな表情を見ると怒るにも怒れなかった


顔を近づけると、水色の綺麗な髪からフルーティーな甘い匂いが鼻をつく


「またシャンプーかえたか?」

「うんっ、源田の大好きないちごの匂い」

「佐久間が好きなんだろ?」

「源田が好きなのー」


拗ねたのか、少し頬を膨らませこっちを上目で睨んできた


いや…
怖いというか、可愛い

その佐久間の行動は俺の気持ちと本能をくすぐった


あやうく廊下が押し倒すところだった



「…源田」

「なんだ?」

「ごめん…今日も一緒に帰れない」

「またか?」

「うん…課題が終わらなくて」

「そうか、気を付けろよ?」


優しく佐久間の頭を撫でると、やわらかい佐久間の細やかな髪の毛が指に絡み付く

佐久間はわかった、と言うと背中を向け立ち去った


佐久間の走る小さな背中を見ると、俺は佐久間に背を向け歩き出す



…これからおこる事も知らずに



―――――――――――――


佐久間と帰らなくなったのは今回が初めてではない


最近…いや、2週間前くらいからだ

俺に対する佐久間の態度がおかしくなったのは


課題があるからと言って、佐久間一人ではできないだろうと思い「手伝うか?」と言うとひきつった笑顔でいいと断った


さすがに何日も続くのはおかしいと思い、担当の先生に聞くと「課題なんて出してない」と言われた


まぁいいか、と軽くあしらい気にせずに今までを過ごしていた



「…あ」


(そういえば…教室に傘を忘れた)


ゆっくりとUターンし、教室に向かって歩き出す


誰もいない廊下に俺の足音が静かに響く

暗い階段を上り、一番端にある教室に向かう。


明日は佐久間におかしを作ってやろう、とくだらない事を考えながら軽くスキップをしながら教室の手前まで来る


教室の前まで来た刹那、教室の中から何か音がする

『あ、あんっ』


教室内から聞こえる高めのいやらしい声、ぐちゅぐちゅと聞こえる水音

そして皮膚と皮膚がぶつかり合う音


これはまさしく…


「性交、か」


まったくけしからん
学校でいかがわしい事をするなど言語道断だ。

傘を取りに来た源田は、やはり邪魔をしてはいけないと思い立ち去ろうとする


(…気になる)

源田は足を止め振り返る。

誰と誰が、どうやって行っているのか思春期男子には気になって仕方ない事だった

だんだん激しくなる水音があがるたびに源田の本能をくすぐる。


そして胸の奥で何か胸騒ぎがするのを気につつも教室の前に立つ


(…ちょっとだけ、なら)


源田はドアに手をかけ、2センチほど開けるとゆっくり中を覗き込んだ



その光景を見た途端、思考が停止し真っ白になった。
目が全開に開き、目の前にある光景を受け入れるのにはかなりの時間がかかった

視線の先には…


「…あ、あぁあんっ」

「は、はぁ…」


クラスの男子と性交をする、佐久間の淫らな姿だった
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