短編

ちょっと違うあいつ。
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※ヒロインちゃんは、まだ自分の気持ちに気付いていません。


「…ねぇ、」


「何?」


「…アンタって、雪村さんと付き合ってんの?」


「………は?」




ちょっと違うあいつ。






昼休みの話だ。


お昼を裏庭で食べていたあたしは、教室に戻る際他のクラスの子に声をかけられた。


何かと思えば、


『あ、あの…、藤堂君と、雪村さんが付き合ってるのか、藤堂君に聞いてほしいんだけど…。』


と、頬を少し赤く染め聞いてきた。


そんなことを聞かれれば、『なぜにあたし?』となるわけで。


思ったことを聞けば、『藤堂君と仲良いから。』だと。仲良くねぇっての。


断るのも面倒だったので、『…分かった。』と無愛想に答えて、彼女のクラスと名前を聞いてその場を後にした。



で、話は冒頭に繋がるわけなのだが…。


目の前にいる藤堂がなんともまぁアホ面で。



「ちょ、まて。……何だって?」



「…何回も言わせないでよ。……雪村さんと付き合ってんの?」


「……は?」



殴っていいですか?



「………で、…どうなの?」


「付き合ってねぇよ!!千鶴はただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもねぇっての。」


「……あっそ。」


「…なんで?」


「…別に。」



それっきりで話は終わってしまった。


次体育だから、着替えなきゃ。と思って、体操服を持って更衣室に向かった。



「…なぁ、今の会話聞いた?」


「ばっちり。」


「…俺いいこと考えちゃったかも。」


「…俺も。」



こんな会話をしていた男子がいることも知らずに。



――‐


今回の体育は男女共に体育館だった。



「藤堂ー!鍵頼むな!」


「はーい。」


体育係の藤堂は後片づけをしてから体育館を後にする。彼が体育倉庫に入る姿を見てから、教室に戻ろう、と思い体育館を後にしようとした時、



「日向ー。このボール片付けといてー。」



「ちょっ!」



クラスのお調子者、高瀬に、今回体育で使ったボールを行き成り投げられた。気持ち悪いくらいニコニコしている高瀬の隣には、同じくニコニコしている仲のいい宮崎の姿。


「…なんであたし?自分でやってよ。」


「ま、細かいことは気にすんな。頼んだぜ。」


「じゃ、俺たちはそろそろクラスに戻るか―」

「そうだなー」


…その台詞が棒読みに聞こえるのは気のせいですか?


やけにゆっくり歩いていくこの2人を見てため息をついた後体育倉庫に向かった。




「…はい。これ。」


「ん?…って日向じゃん。…何?どうしたの?」


「なんか高瀬たちに無理やり押しつけられた。」


「ふーん。」



そのことに特に気にも留めずに、差し出すボールを取って定位置に置いた。


今度こそ戻ろう、と思った時、



どんっ


「わっ!!」


「え?…おわっ!!」



ガラガラッ


ガチャ



……はい?



ちょ、待て。


なんか嫌な音が混じっていた気が…。



誰かに背中押されて、そのまま体育倉庫の中に倒れこんで…。



「…おまっ、…早くどいて…。」


「っ!!ご、ごめっ!!」


苦しそうな声が聞こえたと思ったら、あたしの下には藤堂が。その事に体の中から熱くなるのがわかった。




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