短編
□ちょっと違うあいつ。
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※ヒロインちゃんは、まだ自分の気持ちに気付いていません。
「…ねぇ、」
「何?」
「…アンタって、雪村さんと付き合ってんの?」
「………は?」
ちょっと違うあいつ。
昼休みの話だ。
お昼を裏庭で食べていたあたしは、教室に戻る際他のクラスの子に声をかけられた。
何かと思えば、
『あ、あの…、藤堂君と、雪村さんが付き合ってるのか、藤堂君に聞いてほしいんだけど…。』
と、頬を少し赤く染め聞いてきた。
そんなことを聞かれれば、『なぜにあたし?』となるわけで。
思ったことを聞けば、『藤堂君と仲良いから。』だと。仲良くねぇっての。
断るのも面倒だったので、『…分かった。』と無愛想に答えて、彼女のクラスと名前を聞いてその場を後にした。
で、話は冒頭に繋がるわけなのだが…。
目の前にいる藤堂がなんともまぁアホ面で。
「ちょ、まて。……何だって?」
「…何回も言わせないでよ。……雪村さんと付き合ってんの?」
「……は?」
殴っていいですか?
「………で、…どうなの?」
「付き合ってねぇよ!!千鶴はただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもねぇっての。」
「……あっそ。」
「…なんで?」
「…別に。」
それっきりで話は終わってしまった。
次体育だから、着替えなきゃ。と思って、体操服を持って更衣室に向かった。
「…なぁ、今の会話聞いた?」
「ばっちり。」
「…俺いいこと考えちゃったかも。」
「…俺も。」
こんな会話をしていた男子がいることも知らずに。
――‐
今回の体育は男女共に体育館だった。
「藤堂ー!鍵頼むな!」
「はーい。」
体育係の藤堂は後片づけをしてから体育館を後にする。彼が体育倉庫に入る姿を見てから、教室に戻ろう、と思い体育館を後にしようとした時、
「日向ー。このボール片付けといてー。」
「ちょっ!」
クラスのお調子者、高瀬に、今回体育で使ったボールを行き成り投げられた。気持ち悪いくらいニコニコしている高瀬の隣には、同じくニコニコしている仲のいい宮崎の姿。
「…なんであたし?自分でやってよ。」
「ま、細かいことは気にすんな。頼んだぜ。」
「じゃ、俺たちはそろそろクラスに戻るか―」
「そうだなー」
…その台詞が棒読みに聞こえるのは気のせいですか?
やけにゆっくり歩いていくこの2人を見てため息をついた後体育倉庫に向かった。
「…はい。これ。」
「ん?…って日向じゃん。…何?どうしたの?」
「なんか高瀬たちに無理やり押しつけられた。」
「ふーん。」
そのことに特に気にも留めずに、差し出すボールを取って定位置に置いた。
今度こそ戻ろう、と思った時、
どんっ
「わっ!!」
「え?…おわっ!!」
ガラガラッ
ガチャ
……はい?
ちょ、待て。
なんか嫌な音が混じっていた気が…。
誰かに背中押されて、そのまま体育倉庫の中に倒れこんで…。
「…おまっ、…早くどいて…。」
「っ!!ご、ごめっ!!」
苦しそうな声が聞こえたと思ったら、あたしの下には藤堂が。その事に体の中から熱くなるのがわかった。