短編
□誤魔化せるのもあとちょっと、
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「あはは。だよね」
何がだよね、だ。
「あー、やっぱり俺沙織と話しあうわ」
はい?俺の方が合うし。
「ね。あたしも思う」
思ってんな。
いや。してないよ?俺は断じてイライラなんてしてないし。ましてや嫉妬なんてものもしていない。
誤魔化せるのもあとちょっと、
お昼休み。ぼけーっとしていた俺の耳に、幼馴染の沙織の声と共に同じクラスメートの健の声が入ってきた。
その声はとても楽しそうで。
何故かだんだんイライラ…、いや。ちょ、今の取り消し。イライラなんてしてない。何で俺がイライラなんかしなきゃなんねぇんだ?
だよな?する必要なんてねぇよな?うん。してねぇ。
「ねぇ、平助」
「……なに?」
「…何でそんなイライラしてんの?」
「し、してねぇ!!!」
いつの間にか健との話しは終わっていたらしくて。
「な、何そんなムキになってんの」
「なってねぇ!」
「はいはい。」
呆れた顔をして受け流す沙織に対してちょっとカチンとした。
「で、何?何か用あんの?」
「あー、そうそう。健が今度の日曜日「ヤダ」…いや、まだ何にも言ってない」
何故かとっさに出てしまった「ヤダ」の一言。
いやいやいや。何に対してだよ。言った自分でもわかんねぇ。
「わ、わりぃ。…で、何?」
「だから、健が今度の日曜日遊園地行かないか?って、チケット貰ったんだって。」
「………俺パス」
「はぁ!?なんで!?」
いつもの俺なら即答で「行く!」と答えるだろう。だが今回は話は別だ。
こんな楽しそうに言う沙織を見ると、その…、あー。はい。認める。イライラしてくる。何でこんな楽しそうなの?健と行くから?
「パス」と言った俺が信じられなかったのか、彼女は目を見開いて食いついてくる。
「……用事あるから。」
「は?平助に「用事」なんてものあるの?」
「お前なぁ…!!失礼にも程があるぞ!俺だって用事くらいある!」
いや。ない。
「……なぁんだ…。平助行かないのか…。」
健からもらったであろう遊園地のチケットをじっと見る沙織。心なしかちょっと寂しそうな目をしている。
「…じゃ、あたしもいーかない」
「…え?」
行く気満々だった彼女から出た言葉は予想外の言葉で、思わず言葉が漏れた。
「…何で?楽しみだったんじゃねぇの?」
「んー?…だって、平助行かないんでしょ?」
「そうだけど。…別に俺がいなくたって……」
「平助いないとつまんないじゃん」
何食わぬ顔で言う彼女の言葉に、体の中から熱くなってくるのが自分でも分かった。
さっきまでのイライラが嘘のように、今は気分が良い。
どうか顔に出ていませんよーに!
一週間もないね
(あー。やっぱり幼馴染って良いよな)
(…幼馴染?)
(……それだけ?)