短編
□気になるあの先輩
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あれから10分が経った。いまだに由紀は戻ってこない。
「…おっそいなぁ。」
「あっちぃ〜。」
「本当、夏はやだよね」
すると、体育館の裏のドアから剣道部の人たちが出てきた。
一目見て分かった。
この人たちが皆さまお目当ての「美形集団」ね。
「…すいません……」
どうやらあたしは彼らが此処を通るのに邪魔な存在のようだ。
一言言ってその場を小走りで去って行った
「あッ!ちょっ!…これ……」
その場に携帯を落としたのも知らずに。
―--
「結局見れなかったよー」
「あー。…うん。」
「…何よその反応。“ドンマイ”とかないわけ?」
あれからちょっとして由紀が帰ってきた。そしてどうやらお目当ての人たちは見れなかったよう。
「…ドンマイ」
「むっかつくわね」
あたしが彼らと会ったことは言わない。きっと殴られるがオチだから。
何故だか、さっきからもやもやがあたしの心を覆って、気がスッキリ晴れない。
「…あれ?」
「どうしたの?」
「あれ?…嘘、…え?ない!」
「だから何!?」
「携帯が…ない!」
無意識のうちに携帯に手を伸ばしてしまうのが最近の女子高生、と言っても過言ではないだろう。そしてあたしのその女子高生のうちの1人。
いつも携帯はポケットに入れている。取りだすためポケットに手を突っ込むがお目当てのものはない。
「…鞄とかは?」
由紀にそう言われ鞄の中を乱暴にあさるがそれは見つからない。
「…嘘……。ど、どうしよう…」
「…あたしの携帯貸してあげるから電話しな。」
「あ、ありがとう。」
自分で自分の携帯に掛けるなんて変な感じだ。
コール音が何回も繰り返される。そして6回くらい言ったっとき、プッと言ってコール音が途切れた。それと同時に控えめの「もしもし」という声が聞こえた。声のトーン的に男だ。
「…も、もしもし!?」
『……この携帯の持ち主?』
「はい!そうです!拾ってくださりありがとうございます!!」
『いや、別に…。…えーっと、どうすればいい?』
「あ…。えーっと……。薄桜学園の人、ですよね?」
『うん』
「えーっと…、まだ学校にいらっしゃいますか?」
『…部活終わってないから、あと30分くらいいるけど…』
「本当ですか!?今から取りに行きますので…、な、何部ですか?」
『剣道部』
「そ、それでは、体育館に行きますね!本当にありがとうございます!!それでは、」
『え、あ…。はい…じゃ。』
ピッという音が鳴ったと同時に携帯を閉じる。世の中は便利になったものだ。
「見つかったの?」
「うん。誰か拾ってくれたみたい。あたし、学校戻るね」
「りょーかい。じゃ、ばいばい」
「うん。また明日。」
由紀と分かれて走って学校に向かった。