短編

捻くれ者と馬鹿な君
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私は、世間的に言う「捻くれ者」らしい。


簡単に言うと「素直じゃない」と。



「沙織ちゃん、今から巡察?」


「…はい。」


「気を付けてね!」


「……どうも。」


笑顔でそう言うのは雪村さん。彼女の隣には険しい顔をして私を睨む藤堂の姿。


ズキンッ




捻くれ者と馬鹿な君






私を先頭に、後ろを歩く隊員達。


ボーっとしながら歩く私の頭は、さっきの出来事が支配している。


無愛想に答えた後の雪村さんの苦笑い。睨む彼の顔。軋む胸。


何故胸が軋むのか知っている。


彼に恋をしているから。


だけど「捻くれ者」の私が素直に彼と話す事が出来るはずもなく。それに、彼はきっとあたしの事が嫌いだ。


「きゃー!!スリよスリ!!誰かあの男を捕まえて!!」


女の人の叫び声で我に帰る。彼女が指をさす方向には全速力で走っている紺色の浴衣を着ている男。



「お前たちは裏に回れ!!」


「「「はいッ!!」」」


隊員達に指示を出し、自分はあの男を追いかける。



「おいッ!!」


「ッ!新選組…!!」


男に追い付き、肩に手をかけ思いっきり引く。


私が新選組だと気付いた男は「ヤバい」という顔をし、腰に掛っている刀に手をかけた。



「新選組相手に、剣を使う気?」


「女の癖に調子乗ってんじゃねぇぞッ!!!!」



――‐


「沙織ちゃん!その腕…!!ど、どうしたの!?」


屯所に帰ってきた時間はもう夕食の時間で。


報告をするために食事をしているであろう土方さんのもとへ向かった。すると、私の腕を見た雪村さんが心底驚いた顔でそう言った。他の人も驚いている。



「……ちょっと…いろいろありまして…」


右腕がズキズキを痛む。先ほどの男に、切られたのだ。


新選組の名が廃る。一般人に腕を切られるとは。何とかあの男は捕まえたが。


「す、すぐに手当てしないと!!」


「……大丈夫です。」


「駄目ですよッ!今、医療担当の山崎さんがいないんで、私がやります。部屋まで「大丈夫ですってば!」で、でも…!」


「うるさいなぁ。大丈夫だって言ってんじゃ「おいッ!」


あたしの声を奪ったのは藤堂の鋭い声で。行き成り首元が苦しくなったかと思えば、それは彼が胸倉をつかんでいたからで。



「……何?」


「お前、千鶴がせっかく手当てしてやるって言ってんのに、そんな言い方ねぇだろ!!」


「は?頼んでないし。」


「だから、その言い方がムカつくっつってんだよ!!」


「アンタに関係ない。」


「千鶴の気持ちも考えろッ!!千鶴だけじゃねぇ!俺だって、この場にいる皆も迷惑なんだよ!!」


その言葉に周りの人たちをチラ見した。ほとんどの人は複雑そうな顔をしていて。沖田さんや土方さんは鋭い目つきだ。


それに再び胸が痛くなる。自業自得だ。


「この際だから言うけど、お前その捻くれた性格どうにかしろよ。言っただろ?迷惑だって。」


ズキンッ


「あたしは思った事を言っただけ!!それさえも許されないって言うの!?大体、あたしは「大丈夫」って言ったの!それすらも話からなかった!?」


「そう言う事を言ってんじゃねぇンだよッ!もしも大きな事件があった時、こんなくだらねぇ良い争いなんてやってる暇ねぇんだよ!!」


ズキンッ



「俺はお前に此処にいてほしくない!仲間だなんて思った事ねぇんだよッ!!」


「ッ」


「平助ッ!!言いすぎだッ!!」



目の前が真っ白になった。今、彼は何と言った?此処にいてほしくない?仲間じゃない?


次我に帰った時は、彼は「しまった」というバツの悪そうな顔をしている。


「…そう。」


パシン、と彼の手を振り払って部屋を出て行った。




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