どうしてこんなところで?
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「沙織ー、帰ろう?」


「あ、ごめん。今日図書委員の仕事あって…」


「あ、そっか。頑張って。んじゃね。」


「うん。ばいばい。」



鞄と3冊の本を持って図書室に向かった。






どうしてこんなところで?







あー、面倒くさい。


どうせ今日も誰もいないんだろう。いつもそうだ。


そんな事を想いながら図書室のドアを開ける。この時間帯は差し込む夕日がこの図書室の電気の変わりだ。


それが好きだから、わざと電気はつけない。


一歩入って図書室の中を見渡す。ほら、今日もやっぱり人は…いるぅぅううううう!いる!いるよ!


え?何でそんなに驚いているかって?


そりゃぁ驚くでしょ!だって…


“あの”藤堂平助くんだからですよ!


あたしが入ってきた事に気づき、携帯の画面に向けていた目線をこちらに向ける。



「ッ!」


や、ややばい!!めっちゃくちゃカッコイイい!!!!!

は、鼻血でちゃったらどうしよう!!!


「…」


「…?」


目をそらすことなくじーっとあたしを見てくる平助君。え!?やだッ!何か顔についてるのかな!?お昼のおむすびの米粒とか!?きゃー!恥ずかしいッ!!



「あッ!」


「ッ!?」


すると、いきなり指をさし声を漏らす彼。漫画だったらきっと頭の上に電球があるだろう。


「…な、んでしょう?」


「昨日!目、あった人だ!!」


「!」


覚えていらっしゃるぅうううう!!!


嬉しい!!めっちゃ嬉しいッ!!!

これおかずにあたしご飯5杯は食べれる!!


「あ、ご、ごめん。行き成り。」


驚き、黙るあたしを見て彼は苦笑いでそう言った。


「ぜ、全然大丈夫です!!」


必死になってそう言えば、彼は「ははッ」っと爽やかに笑った。


「えーっと、勉強、ですか…?」


「え?ああ、違う違う。友達待ってるんだけどさ、委員会長引くらしくて。教室は委員会の活動で使ってるから此処着たんだけど、邪魔?」


「い、いいいいえ!!全然!これっぽッちも!!」


「ははっ。なら良かった。」


うおおおおお!!かっこいいいいい!!何だこれ!殺人級!!

もうちょっと喋りたかったが、彼は再び携帯に目を移した。それに少しがっかりしながらカウンターの上に高く積み重なられた本の山を抱え元あった場所に返すため図書室内を回る。


「……これ、全部自分でやるの?」


「え…?」


彼の目線の先にはあたしの腕に抱えられた本の山

「あ、はい…。」


「手伝うよッ!」


「っそ、そんな!悪いですよ!!」


「大丈夫だって。暇だしさ!」


「……あ、ありがとうございます…」


「おう!」



はぁ…。何てかっこいいんだろう…。


――‐


作業を初めてから20分が経った頃、静かに図書室のドアが開いた。



「…平助くーん?」


「ん?あ!千鶴!!」


そこには可愛らしい女の子。この子、知ってる…。平助君と凄く仲のいい…確か、…雪村千鶴ちゃん、だっけ…?


その子の姿を見た瞬間、彼はぱぁっと表情を明るくする。

それに少しズキンッと心が痛む。



「委員会終わったんだけど…、帰れそう?」


「え、…あ…」


どうやら平助君が待っていた人、とは彼女のよう。彼女が言った一言に平助君は言葉を詰まらせあたしを見る。


「あ!こっちは大丈夫ですよ!手伝ってくださってありがとうございました!」


「…ごめんな?途中で…。」


「い、いえ!本当に助かりました!」


「おう。…じゃあな。」


「はい。…また…。」


彼女と肩を並べ図書室を出ていく彼。すっごい絵になるな…。うぅ、心臓痛い…。

でも、今日は幸せだったな…。








鷲掴み
(ギュッってなって)
(ズキンッってなる)







 

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