ただのファンのひとりです
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校庭で友達とサッカーをして遊ぶ彼の姿を教室の窓から盗み見する。

少し癖のある茶色の髪の毛。透き通っている翡翠色の目。ひとつひとつの仕草。満面の笑顔。


「はぁ。今日もかっこいい…。」






ただのファンのひとりです。







「あれの何処がかっこいいんだか…。」


お昼休み、彼を見てうっとりしながら呟いたあたしの一言に友達の咲は呆れた目をして言った。その言葉にすかさず反応するあたしにまた呆れた目を送る。



「はぁ!?何言ってんの!?完璧じゃん!!」


「…まぁ、顔は良い方だとは思うけど……。…性格はよく知らないし。」


「良いに決まってんじゃん!!」


「一回も喋った事のない奴が良く言うわ。」


「うっ…」



冷たく言い放った彼女の言葉に返す言葉がなくなった。



「た、確かに喋った事はないけどさ…良い噂しかきかないし。」


「そんなのあんたらファンクラブが美化したのばっかりに決まってるでしょ。」



容赦ないな、コイツ。くっそ〜。


今、あたしの彼女の話の話題になっている人物は私達2年の中ではもちろん、全学年にまでも大人気の藤堂平助君の事だ。告白された回数は数知れず、ファンクラブに入会した人数も数知れず。


あ、ちなみにあたしも入っています。テヘ。


ほんとカッコイイんだよ、平助君。いや、マジで。ほんっとにカッコよくてさぁ〜。


未だに呆れた目をしてあたしを見る咲を余所に、再び彼に目を向けた。



出会いのきっかけは、約1カ月前だ。廊下ですれ違った、それだけ。


それだけなのに、まんまとあたしの心は奪われた。


もう1ヶ月か…、と思っていた時だった、



「ッ!!」


校庭で遊ぶ彼と目が合った…、気がした。いや!合った!合ったよ!!


「ちょ、ちょちょちょっと咲!!」


「何?うるさいなぁ」


「い、今!今平助君と目があった!!!」


「気のせいじゃ「ない!!」…あっそ。良かったわね。」


こんにゃろ。友達がこんなにも喜んでるのに、そんな風に流して良いと思ってるのか!!


「…はぁ。喋りたいな…」


「…告白すれば?」


「な、なんと!?」


「だから、告白」


「そ、そそんな恐ろしい事出来るわけないでしょうがあ!!!!」



必死になってそう言えば、彼女は自分から話しを振ってきたくせに「あっそ」とそっけなく言葉を返した。ったく、失礼しちゃうわ。


「はぁ!」とわざとらしくため息をついてまた彼に目を向ける。今はサッカーに夢中になっているから、また目が合う事はなさそう。



「……これからどうしよ、っかな」


小さく呟いたその言葉は誰にも届かない。






“ただの”なんて
言わないで。

(行動しなきゃ、)
(何も始まらない、って事くらい)
(分かってるっての。)








 

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