金魚すくいと君との約束
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出店も十分周り、時間ももう9時。そろそろ解散かな、と思いながらもう何回も回った屋台をまだぶらぶらと。



「帰りお見舞いにでも言ってあげようかしら、」



咲がボソッと呟いた。俺も行きたいな。なんて思っていた時、1つ思いだしたことを言った。

「だったらリンゴ飴買ってってやれよ、沙織、屋台で一番リンゴ飴が好きだって言ってだぜ?」


前、保健室で聞いた時のことを言った。咲だったら、そのくらい知ってると思ってて「そうだね、」と返事を返してくれると思ってたのに、




「え?あの子、そういったの?」


「そうだけど…。…何でだ?」


「……それ、嘘よ、だってあの子が一番好きな屋台、きん「あら、咲ちゃんじゃない!」あ!おばさん!」


咲の言葉を奪ったのは高いソプラノの声。たこ焼き屋をやっている人だ。




「…知り合いか?」



「うん。沙織のお母さんだよ。」



予想もしていなかった人物に少し驚く。


「沙織、大丈夫ですか?」


「大したことないわよ!すぐ元気になるわ。良かったら帰りちょっと顔だしてあげて。喜ぶわ。」


「はい。そのつもりでした。」



「…その子たちも、沙織の友達?」


おばさんの優しい目線が俺たちに向けられ、どうすればいいのか分からなかった俺を置いて、千鶴は自己紹介を始めた。



「はじめまして!同じ学校の1組の雪村千鶴といいます!沙織ちゃんにはいつも仲良くしてもらって…。」



何で千鶴はこういうことがすぐに言えるんだ?うん。尊敬するよ、本当。




「君は?」



「あ、はい。千鶴と同じ1組の藤堂平助っていいます。よろしくお願いします。」



大人相手、って結構苦手なんだよな、俺。



「2人の話、よく沙織から聞くわ。仲良くしてくれて、ありがとうね。これ、持ってって。」



そう言っておばさんが差し出した手にはたこ焼きが3パック入ったビニール袋。




「…ありがとうございます」


「いいえ。これからも家の馬鹿な子、よろしくね。」


沙織と、ちょっとだけど距離が縮まった気がした。



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