夢
□ペアで踊る飴細工
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あれは、友達とお祭りに行った時だった。
ふと、飴細工屋さんの前で足が止まった。
あたしの目線の先には一つの飴細工。
女の人と、男の人が踊っている飴細工だ。
凄く、凄くほしかった。
でも、それを買うことはなかった。
食べるのがもったいない、って理由もあったと思うけど、それ以上に大きな理由があった。
あの二人が、離ればなれになっちゃうんじゃないかな、って。
PART,3 ペアで踊る飴細工
「…あー、う"−。うおー。」
「…何言ってんの?」
千鶴と平助と友達になって約一週間がたった。結構仲良くなって時々お弁当も一緒に食べる。
そして今、変な声をあげたあたしに咲が不審者でも見るかのような視線で言った。
「…最近調子悪いのよ。頭痛いし、何か熱っぽいし。」
「夏バテじゃない?ちゃんと水分とってる?」
「とってるよー。」
親子のような会話をしていれば廊下から誰かに呼ばれた。
「千鶴、平助…。」
声をした方を見れば千鶴と平助の姿。
「やっほ、千鶴ちゃん。」
そうそう、1つ言い忘れたことが。2人と友達になって、あたしを通して咲も2人と友達になった。
「どうしたの?」
「あのね、今週末隣町でお祭りあるんだけど、よかったら一緒に行かない?」
「隣町でお祭りか…、」
-また来年、勝負しようぜ-
本当をいうと、顔も声も、ぜんぜん覚えていない。でも、言葉だけは明確に覚えている。
もう2年前のことか。いい加減忘れなきゃ。
「えーっと、もう予定はいっちゃってるかな…?」
「えッ、あ、ううん!何にも入ってないよ。一緒に行こう?咲も大丈夫だよね」
「もちろんッ!」
「よかった。じゃあ、細かい予定はまた今度で。」
「うん。」
「…ねえ、」
するとそこで、ずっと黙ってた平助が言葉をかけた。
「何?」
「…顔色悪くね?」
あら。顔にまででちゃってたか。もう今日は早く寝ようかな。
「……そう?」
「おう。死んだ人みたいだぜ。」
おい。それを女の子に言うか?
「ちょっと頭いたいだけ。大丈夫だよ。ありがとう」
「…ま、無理すんなよな。」
そう言って、ポン、と頭をなでてくれた平助にちょっとドキッとしたのはあたしだけの秘密だ。