鈴の音と下駄の足音

あっちこっち
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鞄は、返してもらってたから、それを持って逃げる決心を固める。


深呼吸をして立ちあがった。



障子から頭だけを出して、小学生の車を確認するような仕草で誰もいないかを確認して部屋を出た。



あと一歩進めば、屯所を出られる。


振りかえろうとしたけど、振りかえったら駄目な気がして、そのまま屯所を後にした。




――‐



涙目になって出て行った沙織。何が起きてんだか全然わからなくて。兎に角着替えて、皆が待つ部屋へ行こう。そこ行けば、きっと沙織もいるだろう。


「平助!てめぇ、どれだけ待たせたら気が済むんだ!!」


部屋に入るなり、土方さんの怒鳴り声を浴びせられた。他の皆もあきれ顔。新ぱっつぁん何て腹が減って死にそう、って顔してる。


でもそんなのお構いなしである人物を探す。



「ひ、土方さん!沙織は!!??」


「あ?一緒じゃねぇのか。いつまでたってもお前がこねぇから、呼びに行けっていったんだが。」


凄く嫌な予感がした。



「おい!平助!何処に行くんだ!!」


「先食べてて!!」



走って、アイツの部屋に向かった。




「沙織ッ!!」


相手の許可なしで、障子を勢い良く開けば…、



「…い、ない……」



沙織の姿は、そこにはなかった。


冷や汗が伝って、生唾をゴクリと飲む。


べ、別に、部屋にいないから出て行ったって限らない。


そう自分に言い聞かせて屯所中を探した。



でも…、



「…何で…何で何処にもいねぇんだよッ!!」


何処を探しても彼女の姿はなくて。イライラがだんだん募ってきて壁を力いっぱい殴る。


物に当たるから、いつも俺は左之さんや新ぱっつぁんに餓鬼って言われるんだ。



「こんなところにいた。何してるの?」


その声に振り向けば、そこにはあきれ顔の総司がいた。



「総司!沙織が!沙織が何処にもいねぇんだよ!!」


焦ってそう言えば、彼は眉間に皺をよせた。



「……どこにも?」


「あぁ…」


「……一回、土方さんと近藤さんのところに行こう」



総司が自分から土方さんの所に行く、なんて珍しい。それほど、彼も焦っているのだろうか。



――‐



「…これからどうしよう。」


屯所を無事抜け出せたは良いが、行く場所などない。


此処が何処なのかもわからない。


…はぁ。



賑やかなこの通り。あんまり東京と変わらないな。て言うか、此処って昔の東京なんだよね。


…何か変な感じ。



「…どうかしはりました?」


「え…?」



綺麗な透き通る声が聞こえた。振り返れば「綺麗」その言葉が一瞬で浮かぶような顔立ちをした女の人がいた。



「迷ったんどすか?」


「あ、……その…。…帰る場所が……な、くて…」


「…それは困りんしたなぁ。……もしよかったら…あちきの家に来はりますか?」


「え…、」


「…あんさん、結構綺麗な顔立ちしとりはるから…。あちきの店手伝ってくれはるんやったら、あちきの家住んでもええですよ。」




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