鈴の音と下駄の足音

マンネリズム
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「ほら、飯持ってきたぞ」


「いらない。入ってこないで。」


「…」


障子を開けかけた手が止まって、彼は「外に置いておくから」と一言言葉を残して去って行った。





part4 マンネリズム





「…はぁ」


あれから約一週間が経った。

彼らはあたしを切る気はないらしい。

ちゃんと食事も持ってくる。一切食べてないけど。

あーあ。この時代に体重計があったらかなり嬉しい結果が見れただろうな。


拒食症とかになったらどうしよう…。


あの日から、かなりあたしはネガティブ思考になった。

なんかもう死んでもいいかな…、なんて。


あー!!駄目駄目!死ぬなんて駄目!!


で、でも…さすがに何か食べなければ死んでしまいそう。


ど、どうしたものか…。



「…なぁ。ちょっとは食べなきゃ死ぬぜ?」


「…」



障子越しに言う彼はきっと翡翠色の目をした彼だろう。


何かと話しかけてくる彼。

うざったいなぁ。


「…入るぞ?」


「は、入ってこないで!!」


そんなあたしの言葉も聞かないで彼は入ってきた。


「…別に毒なんて入ってねぇしさ」


「そんなこと思ってない!あんた達が作ったものなんて食べれないって言ってんの。」


「…」


鋭く言えば、彼は悲しそうな顔をした。は?何?悲しんでるの?


「…何よ…、その顔…何なのよ!!もう出てって!……ッ!!」


「お、おい!!」


そこまで言って、めまいがした。上が下で下が上。視界が歪む。全てがぐちゃぐちゃだ。


次の瞬間には、真っ暗になった。



―--


「…ッ」


「…起きたか…。」


次目を開けた時、視界に入ってきたのは翡翠色の目をした彼と、彼越しに見える古びた天井。



「…ッ!」


急いでコイツと距離を取った。どうやらここはあたしの部屋らしい。


「…」


すると、再び彼は悲しそうな顔をする。


「…あ、あたし……」


「…倒れたんだよ。栄養失調で。…土方さんの家で作ってる薬、石田散薬で一時的な回復をしてるけど…。まずちゃんと飯食わないことには始まらない。な?」


そういう彼の隣にはさっき誰かが持ってきた朝ご飯がある


てか…さ、最悪だ。


あの釣り目野郎の家で作った薬を飲んだ!?


それだけなのに吐き気がする。


あぁ。此処に来て余計男嫌いが付いてしまったらしい。




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