鈴の音と下駄の足音
□ノイローゼ
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男が立ち止った。きっとこの部屋に来い、というのだろう。
男が障子を開けてあたしに視線を送る。きっと「入れ」という意味なのだろう。
「お、おさきにどうぞ」
障子の前にいる男より先に入る=男に近づく という方程式が瞬時に出来上がった。そんな恐ろしいことは出来ない。だから彼に先に入ってもらうという方向でいきましょう。
あきれた目をしたあと、彼はしぶしぶ部屋に入る。
拒否反応を起こす体を頑張って部屋の前までもてってくる。部屋の中を一歩外から見てみれば…
「ッ…!!!」
男、男、男、男、男、男、男、男、男、男…!!!
な、何でこんなにも男が!?いやいや。おかしいでしょ←(実際何にもおかしくありません)
無理無理無理無理。
この小さな部屋に男10人と共に時間を過ごせと!?
あぁ。眩暈が…!!
「早く入れ」
紫色の釣り目をした髪の長い男が鋭く言った。
いや。それは無理な相談だ。本当に。
体が完全に拒否反応を起こしています。
「…っ無理」
「あ"?」
「無理!!こ、此処にいますから。逃げませんから!」
そう言って、部屋の一歩手前に正座をした。
「おい、ふざけ「まあ良いじゃないか、トシ。彼女だって不安なはずだ」ッ」
ちょっと偉い感じの人がそういえば、釣り目の男は黙った。
「…単刀直入に聞く。お前は何者だ」
「…人にそういうの聞く時、まず自分から名乗るのが筋ってものじゃないんですか?」
「てめぇ!さっきから!!「か、彼女の言うとおりじゃないか、トシ。…えーっと、俺らは『新選組』っていう組織だ。此処は新選組の屯所。俺は局長の近藤勇。彼は副長の土方歳三。こっちは同じく副長の山南敬助…なんせ人数が多いからなぁ。俺達の事はこれくらいで、君の事を聞かせてくれないか?」
…嘘。『新選組』?あ、あの幕末に実在した、あの!?ま、まさかこれってタイムスリップ!?し、しかも新選組って男だけだよね!?
「……あ、貴方達に話すことなんて、何もありません」
は、早く逃げなきゃ。その事しか今のあたしの頭には浮かばなかった。
「おい、いい加減にしろ!!さっきからふざけたことばかり言いやがって!」
「ッ…だ、だいたい!アンタ達はあたしの何を知りたいっての!?そんな事知ってアンタ達が得するとは到底思えないわ!」
「……ちがうんじゃね?」
そこで、口をはさんだのは翡翠色の目をした彼。そう、彼のせいであたしは此処に連れてこられたんだ。