鈴の音と下駄の足音
□始まりの音
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土曜日。昨日夜までパソコンをしていたが、今日は大学は休み。お昼ぐらいまで寝ている予定だったが、携帯の着信音で目が覚めた。
「……もしもし」
自分でも分かるくらい低い声。だけどそんなこと気にすることなく相手は明るい声だ。
「あ、沙織?あたしだけどさ、今日暇?」
それはそこそこ仲のいい子からの電話。遊びのお誘いらしい。
「…うん。」
ちょっと面倒くさい、という気持ちもあったが断る理由がそれ以外にないため、遊ぶか、と思いベットから降りた。
「良かった。今日いきなりドタキャンした子がいて、一人分空いちゃってさ。合コンなんだけど、きて「ごめん。無理。じゃ、」」
相手の言葉で気分が一転。断る大きな理由ができたのだ。
「何でわざわざ好きでもない、しかも初めて会った“男”とよろしくやんなきゃいけないのよ。馬鹿か。」
そう。それは男がいること。あることがきっかけで私は男が大っ嫌い。いや、本当に。マジで。
なんかそこらへんで「あたし男の子苦手なんだよねぇ〜。なんかちょっと怖くない?」とか何とか言っている女子と一緒にされては困る。
あたしは「怖い」「苦手」とかいう領域じゃないんだ。嫌いなの。大っ嫌いなの。もうこの世にいなくて良い存在だと思っている。あぁ。女だけの世界っていうものはないのだろうか。
そんなあり得ないことを思いながらいつも一日を過ごす。
「……買い物でも行こうかな」
もう寝る気にもならない。目が覚めてしまった。
ほぼ空っぽ状態の冷蔵庫をみて、買い物に行くことを決めた。
適当に服を選んで、何が入っているか忘れたが、大学に持って行っている鞄を持って家を出た。
あぁ。しばしの別れ。我が家よ。
―--
近くの大きめのデパートに行ってお買いもの。
必要最低限のものを買って、あとは買いもしない雑貨を見て回る。
そろそろ帰ろうかな、と思いいつもの帰り道を歩く。
リンリン
カラン カラン
「…」
リンリン
カラン カラン
「…?」
鈴の音が聞こえた。それと一緒に下駄で歩く音も
凄く綺麗で、透き通ってる感じ。
なんか、京都とか、そういった雰囲気の場所を思わせるようだ。
最初の方は気分良く聞いていたのだか、いつまでたっても聞こえるその音にいい加減苛立ちを覚えてくる。
何なんだ、一体。
まるであたしを追いかけてきているよう。
…怖ッ!
無意識に早歩きになった。
後ろを振り返っても、誰の姿もない。
「ッ!すいませ…ん」
曲がり角で、誰かにぶつかった。
ぶつかったと同時に、相手が持っていた鈴が地面に落ちて、さっきよりもより強い鈴の音が響いた。
ぶつかった反動で瞑ってしまった目を開けた。
「……え?…此処、どこ…?」
そこは、まさしく、鈴の音を聞いていた時に想像していた風景だった。
鈴の音と
下駄の足音
part1,始まりの音