鈴の音と下駄の足音

始まりの音
1ページ/1ページ




土曜日。昨日夜までパソコンをしていたが、今日は大学は休み。お昼ぐらいまで寝ている予定だったが、携帯の着信音で目が覚めた。


「……もしもし」


自分でも分かるくらい低い声。だけどそんなこと気にすることなく相手は明るい声だ。


「あ、沙織?あたしだけどさ、今日暇?」


それはそこそこ仲のいい子からの電話。遊びのお誘いらしい。


「…うん。」


ちょっと面倒くさい、という気持ちもあったが断る理由がそれ以外にないため、遊ぶか、と思いベットから降りた。



「良かった。今日いきなりドタキャンした子がいて、一人分空いちゃってさ。合コンなんだけど、きて「ごめん。無理。じゃ、」」


相手の言葉で気分が一転。断る大きな理由ができたのだ。


「何でわざわざ好きでもない、しかも初めて会った“男”とよろしくやんなきゃいけないのよ。馬鹿か。」


そう。それは男がいること。あることがきっかけで私は男が大っ嫌い。いや、本当に。マジで。


なんかそこらへんで「あたし男の子苦手なんだよねぇ〜。なんかちょっと怖くない?」とか何とか言っている女子と一緒にされては困る。


あたしは「怖い」「苦手」とかいう領域じゃないんだ。嫌いなの。大っ嫌いなの。もうこの世にいなくて良い存在だと思っている。あぁ。女だけの世界っていうものはないのだろうか。


そんなあり得ないことを思いながらいつも一日を過ごす。


「……買い物でも行こうかな」


もう寝る気にもならない。目が覚めてしまった。

ほぼ空っぽ状態の冷蔵庫をみて、買い物に行くことを決めた。

適当に服を選んで、何が入っているか忘れたが、大学に持って行っている鞄を持って家を出た。



あぁ。しばしの別れ。我が家よ。



―--


近くの大きめのデパートに行ってお買いもの。


必要最低限のものを買って、あとは買いもしない雑貨を見て回る。


そろそろ帰ろうかな、と思いいつもの帰り道を歩く。


リンリン

カラン カラン

「…」


リンリン

カラン カラン

「…?」


鈴の音が聞こえた。それと一緒に下駄で歩く音も


凄く綺麗で、透き通ってる感じ。

なんか、京都とか、そういった雰囲気の場所を思わせるようだ。



最初の方は気分良く聞いていたのだか、いつまでたっても聞こえるその音にいい加減苛立ちを覚えてくる。


何なんだ、一体。


まるであたしを追いかけてきているよう。


…怖ッ!


無意識に早歩きになった。


後ろを振り返っても、誰の姿もない。



「ッ!すいませ…ん」


曲がり角で、誰かにぶつかった。


ぶつかったと同時に、相手が持っていた鈴が地面に落ちて、さっきよりもより強い鈴の音が響いた。


ぶつかった反動で瞑ってしまった目を開けた。



「……え?…此処、どこ…?」



そこは、まさしく、鈴の音を聞いていた時に想像していた風景だった。






鈴の音と
下駄の足音




part1,始まりの音






 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]