鈴の音と下駄の足音
□運命とはなんぞや
2ページ/3ページ
「…その子、男が大の苦手でさ。…男しかいない俺達が住んでる場所を出て行った。……やぱり、仕方ない事なのかな、って思ったんだけど、どうしても諦められなくて…。アンタと同じ「沙織」って名前なんだけど…知らないよな…。」
「…す、すいません。」
「い、いや!こっちこそ…。行き成りごめんな」
「……いえ…。…で、でも……そんなに貴方が思いつめることはないと思います。」
「え…?」
「あ、いや…その…な、なんとなくですが…。」
そう言えば、彼は優しく笑って、おちょこに入っているお酒を一気飲みした。そして自分で再びお酒を注ごうと、徳利に手を伸ばしたところで、
「あ、わたしがやりま、す」
仕事上、お客が自分で注ぐのを見て黙っている訳にもいかず、手を伸ばせば、
「ッ!!」
ゴトッ
手が触れた。
反射的に引っ込んでしまった手。お酒は重力に逆らえずそのまま畳に落ち、こぼれたお酒によってシミを作る
「す、すいませんッ!!」
急いで片付けようとした時、
「ちょ、ちょっと待って!!」
「ッ!!」
「か、顔……あげて?」
や、やばい…。
かなりやばい。絶対バレタ。どーしよー!!!!
「わ、私…拭く物を取って「ねぇ、」ッ!!」
何とかごまかそうとして言った言葉は意味をなくした。そして、彼はあたしの肩に手をかけ無理やり顔を上げさせようとした。そこであたしが何も反応するわけなく勢い良く距離をとる。
そして、この行動で余計彼は怪しく思えたようで…、
「…ッ」
「…あんた…もしかして……「花魁、失礼するでありんす。」
そこで彼の声を奪ったのは最近よく聞く声だ。スッと静かに襖が開いてそこには清華さんの世話係のお琴ちゃんの姿。
「…接客中でありんすよ、何用で?」
「もうしわけありんす。沙織様、少しこちらへ。」
助け舟来たーーーーーー!!!!!!!!
「は、はいッ!」
急いでそちらに向かえば、彼女は耳打ちで「人手が足りないので、他の人のお相手に移ってほしい」とのこと。よっしゃー!ナイス!ナイスすぎるよお琴ちゃん!!
「わ、分かりました!!」
清華さんに今の事を話して彼らとはおさらばだ。
「で、では…私はこれで失礼いたします。」
「え!?ちょッ!待って!!」
襖を締め始めた時、彼の焦った声と焦った表情が見えた。
悪いけど、いまさら帰ることなんてできないんだ。