鈴の音と下駄の足音
□運命とはなんぞや
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清華さんの言葉に、新選組の人達の目線は一気にあたしに注がれた。
オワタ。
part9 運命とは何ぞや
「…」
「…」
「…」
「…」
そのまま数秒間見つめあう。
冷や汗がつぅと額を伝う。唾をゴクリと飲む。
「え、っと…「おお!こっちの女の子も偉く別嬪じゃねぇか!!」え?」
沈黙が続いていた部屋に響いた元気な声は永倉さんのもの。
「びっくりしたぜ。名前が一緒なもんだからよ。」
「…知り合いでありんしたか?」
「いいや。名前が一緒なだけで…。ははッ。こっちの子の方が別嬪だ。」
おい。殴るぞ赤毛。おい。
同一人物だっつーの!!!!
「……違うのか…」
ボソッ。と呟きが聞こえたかと思ったらそれは藤堂さんのものだった。
ちらっとそちらに目線を向けた。
「んだぁ?まだ気にしてんのかよ。」
「ま、まだって何だよ!そりゃぁ気にするだろ…。俺のせいで屯所を出て行ったみたいなもんだろ。」
「ねぇ。せっかく皆で飲みに来てんだから、もういなくなった人の事をそんな悲しそうに言うのやめてくれる?」
「悪かったな、総司!!!あーもう!!今日は飲むぞ!!」
えー…っと、つっこんでいいですか?
別にアンタが嫌だからって理由であの場所を出て行ったわけじゃねぇよ。あんたら全員が嫌だからだっての。なんかあたしが悪いみたいな感じになってんじゃんもう!!
それにお前!!“いなくなった”ってなんだよッ!“死んだ”みたいになっちゃうじゃん!勝手に殺すなッ!!
と、そんなあたしの心のつっこみはもちろん誰にも届いていないわけで。
清華さんは皆さまのお酒を注ぎに行った。
その際「あの方のお相手を」といわれ、目線の先を見てみればそこにはちびちびとお酒を飲む藤堂さんの姿。
はぁぁぁああ。
大きく心の中でため息をついて彼の元へ向かう。その際、ふと釣り目野郎と目が合う。
「…」
「ッ…」
目が合った際、彼は眉間のしわを倍にする。
やば。気付かれた…?
「土方様、お注ぎいたしますえ、」
「え、あ、あぁ。すまねぇ。」
ナイスタイミングで清華さんがアイツに話しかける。
ふぅ。
「…お、お注ぎいたします。」
「お、おう。」
ぎこちない空気の中彼は持っていたおちょこをあたしの前に出す。
「……なぁ」
「は、はい?」
「…い、いきなりなんだけどさ…。…出て行っちゃった女の子がいるんだ。」
「…」
月明かりが差し込んでいるおちょこの中に入ったお酒を切なそうに眺めながら言う彼。ポツリポツリと話し始めた。