喧嘩対処法

戸惑いという名の逃げ
1ページ/1ページ




ピンポーン


ドキドキ


「…」


ドキドキ


ガチャ


「おう!いらっしゃい!」


「お、おじゃまします…」


ドキドキ





23,戸惑いという名の逃げ






平助の宿題を手伝うと約束して、さっそく次の日に手伝うことになった。


場所は平助の家で。今日平助以外誰もいないらしい。


そして、あたしはとてつもなく大きな勘違いをしていたらしい。


「…あれ?他の皆は?」


「え?来ないけど?」


「………え?」


「え?、じゃなくて今日は俺ら以外いねぇぜ?」



なんですとぉぉぉおおお!!??


知った瞬間、早かった心臓の動きが倍以上の速さになった。



「……そ、そっか。」


「…?」



こんの鈍感男。


部屋まで案内するこの男の背中を蹴りたい衝動に掛けられるがそれを必死に我慢する。



「此処が俺の部屋。飲み物取ってくるから待ってて」


「あ、…うん。…ありがとう」


そう言って、彼は部屋を出て行った。



ゆっくりと彼の部屋を見渡す。


男の子らしく、ちょっとだけ散らかっていて、教科書や小説より圧倒的に多い漫画の数。さっきまでやっていたのかゲームが床には置いてある。


それにちょっと笑いそうになりながらその場に腰を下ろした。



「おまたせー。」



お盆に2人分の飲み物とお菓子を乗せて彼は戻ってきた。



部屋の真ん中にある小さなテーブルに置いて「さぁ!さっそくやるか!」と言って彼は宿題を取り出した。



「ずいぶんやる気ね。珍しい」


「こういう時ちゃんとやっとかなきゃな、って思ってさ!」


そう言いながらカチカチと音をたててシャー芯を出す。


「…何からやるの?」


「数学!ぜんっぜん分かんねぇ!」


何故か自信満々に言う彼に笑いそうになりながら宿題に目を落とした。うん。もうやったことあるからちゃんと分かる。



「これ、どーやんの?」


「あ、これは…ほら、これと同じ公式をつかって…」


「あ、…あー!分かった!…できた!」


「うん。合ってる……ッ!!」


「ッ!!」



ち、近い!!


横を向けば、思っていた以上に彼の顔は寸前に。その距離は、キスをしようと思えば、出来るほどの。



「ッ…ご、ごめん」


「あ、いや…。こっちこそ……。」


ドクン ドクン


苦しいよ。胸が締め付けられる。


今、あなたは何を思っているのでしょうか。


―--


それから着々と進み、数学は全部終わった。


「おわっ……たー!!」


「おつかれ」



大きく伸びをする彼を見て自然と口元が綻ぶ。ふと時計に目を向ければもう5時だ。



「ちょっと休憩にしよっか」


「おう!ほんとサンキューな!!めっちゃ助かった!」


「平助、やればできるのにね。」


「ほんとだよなー」


「調子のんな」


さっきの気まずさが嘘のように、今は何時ものように話している。


すると、突然平助がちょっと真剣な顔をした。


「…どうしたの?」


「…あ、のさ…変なこと聞いていい?」


「…な、なによ……」


「沙織ってさ……、その……、好きな人、いる?」


ドクンッ


今日で、一番大きく心臓が鳴った。



「…え、…っと……な、何で?」


「いや。別に…、なんかちょっと気になったから。…恋愛とか、そういうの興味あんのかなぁ、って思ってさ」


「……あー…。興味ないってわけじゃないけど…。」


「で!いるの?好きな人。」


「……いるんじゃない?」



「な、なんだよそれ。はっきり言えよなぁ!」


なぁんだ。何にも気に掛けてくれないんだ。


なんか…。悲しいなぁ。



「……そういう平助はさ…、あの女の子とどうなのよ」


「…あー。智香の事…?」


「…うん」


「べ、別に…智香とは…な、んにも…ないけど、よ…」


じゃあ何でそんな戸惑った感じなのよ



「…平助って…、嘘下手だね」


「な、っなんで…?」


ほら。すぐにでる。


「…あの子と…、何かあったの?」


「……その…、何か……『好き』って言われた…」



そう言う彼の頬は少し赤く染まっていて、心なしかちょっと嬉しそうにも見えて…。


涙が、出てきそうになった。


「…こ、告白じゃん!へぇ…。やっぱりアンタモテんのね!顔だけは良いから」


「顔だけって何だよ!」


「だって本当の事。……で、OKしたの?」


「…いや。……考えとく、って言って…それっきり。」


「…ふぅん。」


「……てかさ、…」


「…何?」


「……沙織さっき『顔だけは良い』って言ったけどよ。……何?俺の事、かっこいいとは思ってんの?」



「…!!」



そう言われて、自分でも分かるくらいボッと顔に熱を帯びた。きっと今のあたしの顔は真っ赤だろう。



「な、何言って…!」


「だって…、そういうことじゃん?」


そう言う彼も、ちょっと拗ねたように頬をほんのり赤く染めている



「う、自惚れないで!こんの自意識過剰!!」


「痛っ!た、叩くことねぇじゃん!!」


「う、うううるさい!!も、もう帰る!」


「は!?え、ちょッ…。お、送ってくって!」


「いい!!1人で帰れる!!バイバイッ!」



後ろであたしを呼ぶ声がしたけど、足早に彼の家を出た。



「……ばっかじゃないの…」





自惚れ
という名の期待

(期待させるようなこと)
(しないでよ。馬鹿野郎)



―--


ちょっとナルシーな平助君(笑









 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]