喧嘩対処法

夏休みのお約束
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認めよう。


自分に嘘をつくのはもうごめんだ。


だから、認める。


あたしは、平助の事が好きだということを。




22,夏休みのお約束






認めてから2日が経った。


何も行動を起こせずにいるあたし。


今の時間は13時。

午前にやった宿題で夏休みの宿題、すべて終わった。


頑張った、あたし。


今日も、何のアクションも起らず平和に終わるのだろうと思った時だった、



「沙織ー!!お客さんよー!!」



2階にあるあたしの部屋に、1階にいる母の呼ぶ声が聞こえた。



客?


あたしに?


誰だろう。全然思いつかない。


急いで玄関に向かえば…、



「な、何でいるの…!?」



「あ、あはは」


「おじゃましまーす」


「突然ごめんね?」


「……邪魔するぞ」



上から、苦笑いの平助、楽しそうに言う沖田先輩、心配そうに言う千鶴ちゃん、無表情の斎藤先輩。



…何故?



「え、…な、何…?…どういう、こと…?」


「こんな所で喋らないで、部屋にあげてあげなさいよ」



こんがらがっているあたしを余所に、母が言う。



「……と、とりあえず…あがって。」


彼らは綺麗に靴を並べて2階に上がるあたしについてくる。


部屋片付けといて良かった。そんなの事を心の隅っこで思って部屋に案内。


「……今飲み物持ってくるので、適当に座ってて。」


「あ! それなら…、飲み物とお菓子持ってきたから…。」


部屋を出て行こうとしたあたしに平助がそう言いスパーの袋に入った飲み物とお菓子を差し出した。


「…あ、ありがとう……」


「お、おう。」



何故かお互いぎこちない。


とりあえず、人数分のコップとお菓子を入れるお皿を取りに下に行った。



戻ってくれば、予想外に彼らはおとなしくちょこんと座っていた。しかも何故か正座。



「で、…えーっと……。…何の御用で?」


4人横に並んで座る彼らの前に座ってそういえば、



「おい、総司!…い、言えよ」


と、平助は沖田先輩に言う。


「何で僕?平助が沙織ちゃんに会いたいって言うから来たんじゃん」


え…、


「はぁ!?な、なに言って…!総司がいきなり遊びに行く、とか言うからだろ!?」


ニコニコ笑いながら言う沖田先輩に対し、戸惑ったように睨む平助。


そんな2人を見て、



「4人で遊ぶ約束をしていたのだが、他にも誰か誘う、ということになり、アンタを誘いに来た。」



斎藤先輩が表情を変えずに言った。



平助に目線を送れば「そ、そう!はじめくんの言う通り!!」と、少しあわてたように言う。



「だ、だからって何で家…?普通にメールか電話してくれれば…。」


「いや…、なんか家行きたいなぁ…って総司が!」


「何で僕なの?沙織ちゃんを誘いたいって言ったのも、家に行きたいって言ったのも平助でしょ?」



さっきから…、


さっきからさ…、


「ば、馬鹿!ちげぇだろ!?皆で話し合って決めたじゃん!!」


「も、もういいから…。ほら、正座なんかしてないで、もっとリラックスしていいから。」


期待させるようなこと、言わないでよ。


こっちがどんどん惨めになるだけじゃん。



「わ、沙織ちゃん今まで宿題なんてやってたの?」


「え…、あ、はい…。」



すると、沖田先輩が机の上に置いてあった今日の午前中やった宿題を指差して言った。



「マジで!?お前宿題なんて前日になって急いでやるのが夏休みのお約束だろ!!」


いや。そんなお約束なんて知らんし。


「急いでやるのなんてヤダし。」


「これだから真面目な奴は…。あとどれくらい残ってんの?」


「……もう全部終わったけど?」


「はぁ!!??お、お前…!裏切ったな!?」


「約束なんてした覚えなんてないけど?」


冷たく言えば彼は口を噤んで黙り込んだ。


「そんな事言うんなら平助、沙織ちゃんに勉強教えてもらえばいいんじゃない?」


「「は?」」



恐ろしい事を言う沖田先輩は相変わらずの笑顔だ。



「平助だって嫌でしょ?前日になって急いでやるの。」


「そ、そうだけどよ…。総司だって。」


「何言ってんの?僕も宿題終わってるよ?古典以外。てゆーか、古典はやる気無いけど。」


「お、お前まで…!ま、まさか…!!」



そう言って、平助は千鶴ちゃんと斎藤先輩を見る。


「あ、あははは。」


「千鶴も…?」


「…」


「は、一君まで!?」



此処にいる自分以外の人間はすでに宿題を終わらせていた。それを知った平助は顔を引きつらせる。



「沙織!!」


「………何?」


「頼む!宿題手伝ってくれ!!」


顔の前でパンッと音をたてて手を合わせ頼み込む平助に、


「……良いよ。別に」


と、無愛想に答えた。






君と結んだ
(無愛想に答えたあたしに、 )
(彼は満面の笑顔で)
(ありがとう、と言った)


―--


今回はあえて智香ちゃんとの話を出しませんでした。


次回は出します!お楽しみに。


あー。

宿題終わんないー。









 

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