喧嘩対処法

風鈴の音
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「明日から夏休みですが、えー、皆羽目を外さないように、此処の生徒だとしっかり自覚を持ち、有意義な夏休みを過ごしてください。」



全校生徒が集まった暑苦しいこの体育館で、長かった校長の話も終わった。


あー、明日から夏休みか。


19,風鈴の音




「お前ら―、犯罪なんて面倒くさいこと起こすんじゃねぇぞ。そんじゃ、高校生活一番最初の夏休み、楽しく過ごせよ。はい!解散!!」


校長の話とは違って、一言で話を終わらせた担任。先生の最後の「解散」という言葉で1年2組は散った。


あー、明日から静かに過ごせるな。さっさと宿題を終わらせて…、


頭の中で夏休みの計画をパパッと計画をたてていた時だった、



「沙織はさ、夏休み、誰かと遊ぶ予定とかあんの?」


「別にないけど…」



平助にそんな事を聞かれた。

最初は嫌味か?とか思ったけど、表情からしてそうではなさそう。


「そんじゃぁさ、遊ぼうぜ!みんなで!」


「……いいよ。」


「じゃ、じゃあさ…、」


と、此処でいきなり自信なさげになった平助。


「…じゃあ?」


「…じゃあさ…その、…メアド!教えて、くんね…?」


ああ。何だ。そんな事か。


「良いよ。赤外線でいい?」


「お、おう!!」



画面に「完了しました」という文字が出て、携帯をパタンと閉じた。


「じゃ、予定決まったらメールするな。」


「うん。じゃあね」


―--


夏休みが始まって今日で3日目。今日の分の宿題を片付け、伸びをした時、机の上に置いておいた携帯が鳴った。


画面を開ければそこには『平助』と表示された。



「…もしもし」


『沙織か!?俺!平助!』


…いや。分かるっての。


「うん。…どうしたの?」


『今から遊べるか!?」


「今から…?…別に平気だけど…。何処?」


『海!』


「…は?」


『だから、海!』


お前なんか波に飲み込まれてしまえ。


―--



「…あっつ。」


バスで約15分の近くの海岸。


時期でもあってか、海にはたくさんの人。家族で来ている人もいれば、カップルや友達同士。


その海岸の海の家の前で待ち合わせなのだが…、


「沙織ー!!」


と、海の方からアイツが呼ぶ声が。


そっちの方に目を向ければ海から上がってくる平助、雪村さん、同じクラスの何とかさん、沖田先輩、知らない人。


もう皆は海で泳いでいたよう。


「……じゃ、あたしもう帰るね」


「ちょちょちょッ!ま、待てよ!!」


何かもう場違いな気がする。うん。あたしが。此処にいて良い存在じゃない。そんな気がするんだ。そんな事を思い帰ろうとしたあたしを平助が必死に止める。



「あー!やっぱり日向さんだったんだ!!」


「…どうも」


同じクラスの…何とかさん。雪村さんと仲がいい…、何だっけ?


「あたし日向さんと友達になりたかったんだ!よろしく!お千ちゃんって呼んでね!」


あ!思い出した!千姫さんだ。

名前に『姫』なんて入ってるなんて凄いなぁ、とか思ったことがあった。


「よ、よろしくおねがいします…」


「あー、お千ちゃんズルイ!沙織ちゃん!私のことも千鶴ちゃんって呼んでね!」


「は、はあ…」


2人に一気に言われちょっと戸惑っていた時だった、


「ひさしぶり。沙織ちゃん」


「………どうも」


話しかけてきたのは沖田先輩。前と変わらず何を考えているのだかわからない。やっぱり彼は苦手だ。


「何その間。傷つくなぁ」


いやいやいや。絶対傷ついてないよね?


「え、何?沙織と総司知り合いなの?」


「……知り合いってほどの「そうなんだ。僕と沙織ちゃんはこういう仲」」


そう言って腰に手を回す沖田先輩。あの、殴られたいですか?


「え!?…えぇぇぇえええ!!??嘘!マジで!?」


「嘘に決まってるでしょ。言われたことを何でも信じない!…沖田先輩も、手、離していただけますか?」

ったく。面倒くさい人たちなんだから。


ため息をついたとき、ふと目が合った見た目からクールなこの人。


…どっかで見たことある。


そうだ、よく校門に立っている……、


「ほら、一くん、黙ってないで自己紹介!」


「……2年の斎藤一だ。」


「…1年の日向沙織です。よろしくお願いします」


2人同時にペコと小さく頭を下げる。


「あははッ良いね。このコンビ。」


と、面白そうに笑うのは沖田先輩。


「こんな所で話してるのもアレだし、早く泳ごうぜ!」


平助の一言で皆は海へ向かって直行。


元気だなぁ


そんな事を思いながら、あたしも水着に着替え約3年ぶりの海に入った。



―--



時間が過ぎるのはあっという間で。久しぶりに楽しい時間を過ごせたな。


「そんじゃ、暗くなってきたから花火やるぞ!花火!」


どこからか出てきた大きな花火セットを持って小さな子供のような笑顔を見せる平助にこっちも自然に笑顔になった。



色とりどりの花火にすこしうっとり。花火ってこんなに綺麗だったっけ?


ああ、そうか。このメンバーだから余計綺麗に感じるのか。


…あれ。あたしって、いつからこんなに友達と一緒にいるようになったんだっけ?


ま、いっか。



そんなことを考えていた時だった。



ドンッ


「すいません!」


「あ、いえ…こちらこそごめんなさい」



少し離れたところで花火をやっていた5,6人の集団がいた。その中の1人の女の人とぶつかった。


先に謝ったあたしに対して高い可愛いソプラノの声で謝り返す彼女。



「……へ、いすけ…?」


「え、」


呼ばれたのはアイツのはずなのに、何故かあたしが反応してしまった。



「…平助?」


「ん?誰か呼んだ…?…………智香(ちか)」



唖然とし見つめあう2人。


少しだけ肌寒い風があたしを包んだ。






それは
始まりの合図

(何の始まり?)
(恋、ってやつだよ)



―--


うふふふふ←







 

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